国土交通省は、10月1日から直轄工事の社会保険加入対策を強化する。4月以降の直轄工事では、社会保険に未加入の2次以下の下請けがいた場合、元請けに猶予期間(原則30日)を設けて加入を指導するよう求めている。10月1日以降は猶予期間中に加入を確認できない場合、元請けに制裁金・指名停止・工事成績減点のペナルティーを与える。また、元請けには、請負代金内訳書に法定福利費の明示も義務付ける。同省では、直轄工事での対応を踏まえ、地方自治体の発注工事でも対策を強化するよう働き掛ける。
2016年度までの直轄工事では、未加入の元請けと1次下請けに対策を講じていたが、今年4月以降は元請けと契約関係にない2次以下の下請けに対象を拡大。30日間の猶予期間を設け、元請けが未加入の2次以下の下請けにも加入を指導するよう求めている。
10月1日以降に入札手続きを開始する工事では、猶予期間内に加入の確認書類(社会保険料の領収書など)を提出しなければ、下請け金額の5%に当たる制裁金の他、指名停止や工事成績の減点などのペナルティーを元請けに与える。猶予期間は原則30日とするが、加入指導の事実が確認できれば未加入の2次下請けで60日、3次以下で90日に延長できる。
一方、国交省は、直轄の工事請負契約書を改正し、10月1日から元請けが作成する請負代金内訳書に法定福利費(事業主負担分)を明示することを義務付ける。直轄工事では、開札後に公表する入札調書で予定価格に含まれる法定福利費(事業主負担分)を公表しているが、元請けが支払う法定福利費を明示するルールはなかった。
直轄工事では、これまで請負代金額1億円以上・工期6カ月以上などで提出を求めていた請負代金内訳書について、契約書を作成する全ての工事で提出するよう対象を拡大。元請けが提出する請負代金内訳書に法定福利費の事業主負担額を記載させ、発注者も明示された額を確認する。
「約款改正=自治体に段階的対応求める」
国交省は、10月以降の直轄工事での対応を参考に、自治体をはじめとする他の発注者にも対策の強化を働き掛ける。公共工事については、公共工事標準請負契約約款を改正し、下請け企業を社会保険加入企業に限定する条文を新設。自治体が約款の条文を選択できるように整理し、地域の実情に応じ、段階的に対策を強化できるようにした。
請負代金内訳書への法定福利費の明示については、公共工事だけでなく、民間・下請けの標準約款も改正。公共・民間を問わず、社会保険料の原資となる法定福利費を確実に支払う意識の浸透を狙う。
提供:建通新聞社