国土交通省は、民間工事の現場で、足場や保護具、教育訓練経費などの安全衛生経費の支払い実態を2018年度に調査する。3月に施行された建設職人基本法で、安全衛生経費が確実に支払われるよう、国・都道府県に必要な施策を講じることが求められており、実態を把握した上で対策を検討する。また、専門工事業者が行う安全衛生管理の優良な事例を収集し、事例集としてまとめる。
建設職人基本法では、建設工事従事者の安全と健康の確保を国・都道府県の責務と規定している。同省は、18年度予算の概算要求に4000万円を盛り込んでおり、安全衛生経費の実態調査を通じ、経費が適切に支払われる施策を講じる。
同省の「建設業法令遵守ガイドライン」では、労働災害防止対策を講じるために必要な安全衛生経費を義務的に支払うべきものと記載。下請けが提出した見積書に明示された経費を支払わないことが建設業法19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」に違反する恐れがあるとしている。
しかし、特に民間工事では、安全衛生経費の内容、計上方法(積み上げ、率計上など)が不明確で、元請け・下請け間の経費負担の解釈もあいまい。国交省は、まず民間工事で安全衛生経費の支払い実態を調査。加えて、足場、保護具、手摺り、昇降設備、教育訓練費など、安全衛生経費の定義も明確にする。
調査結果を踏まえ、安全衛生経費が支払われるための施策を検討する。合わせて、発注者・元請けの評価が高い専門工事業による自主的な安全衛生管理の取り組みも調査。優良事例を集め、事例集として各現場に展開する。
建設職人基本法を巡っては、18年度に労働法制上の保護対象外である一人親方に対し、労災保険特別加入制度の周知と加入促進も図る。厚生労働省の概算要求には関連経費5600万円が盛り込まれており、特別加入制度の周知・広報、安全衛生教育用テキストの作成などを行うとしている。
提供:建通新聞社