国土交通省の田村計土地・建設産業局長は建設専門紙との就任インタビューで、建設業の働き方改革について「ガイドラインで適正工期の意識の浸透を図り、その上で規範性の高い約款や法律に引き上げる取り組みが必要だ」との考えを示した。長時間労働の是正に向けた道筋をつけるため、ガイドラインの策定後に「民間発注における好事例を展開しつつ、実態把握を進め、それを基にガイドラインを更新する」と、段階的に環境を整備する方向性を語った。
直轄工事をモデルに公共工事の発注者・元請け間に向けられてきた建設産業政策が「担い手不足という環境変化の中で、民間発注者と元請け、元請けと下請けの民民契約に関与する方向に変わってきた」とみている。
働き方改革についても「仕事を頼む建設業がいなくなるかもしれないという危機感が民間発注者にも広がりつつある」との認識も示し、時間外労働の上限規制が適用されるまでの5年の猶予期間を「無駄にしないように対策を進める必要がある」と話した。
関係省庁連絡会議で申し合わせる『建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン』については「民間発注者の意見を集約する受け皿としてまとめ、その後も更新していくことになる」と説明。ガイドラインを普及させ、段階的に約款などに反映させることで「猶予期間の終わる5年後を目標に、市場に混乱の生じない形でソフトランディングさせたい」と述べた。
一方、技能者の経験と技能を蓄積する建設キャリアアップシステムの構築に向けては、2018年秋の運用開始を見据え、システムに登録する事業者などに対し「厚生労働省と連携した助成措置を検討したい」と明かした。
不動産登記で所有者が判明しない所有者不明土地に対しては「公共事業のスピードアップなどの観点で障壁になる」と問題視。政府はこの問題に対応する関連法案を次期通常国会に提出するとしており「所有者不明土地の公的利用を促進する制度を年内に詰めたい」との考えを示した。
【略歴】たむら・はかる 東京大学法学部卒。1984年建設省入省。総合政策局建設業課建設業構造改善対策官、兵庫県県土整備部まちづくり局長、大臣官房人事課長、総合政策局政策課長、大臣官房総括審議官などを経て7月から現職。東京都出身。57歳。
提供:建通新聞社