国土交通省は6月23日「適正な施工確保のための技術者制度検討会」の報告書を大筋で固めた。報告書では、技術者制度の目的を「最低限の品質確保」から「品質向上」へと進化させる視点が示され、高い能力を有する技術者を育成し、技術力を継承する必要性を指摘。具体的には、主任技術者要件となる民間資格を公的資格として認定したり、継続的に技術研さんに取り組む技術者を評価する仕組みの構築を提言した。さらに、元請けの主任技術者の実務経験などを確認する「確認(登録)制度」をつくり、適正な能力のある技術者配置も徹底すべきとした。
現在の監理技術者・主任技術者は、施工管理技士などの公的資格を持たなくても、一定年数の実務経験を積めば役割を担うことができる。
ただ、報告書では、この実務経験の確認が難しいため、可能な限り公的資格保有者を配置することが望ましいと記載。国家資格がある7業種以外の業種では、認知度やレベルに応じ、公的資格として民間資格を認定するよう求めた。CPD(継続教育)を活用し、技術者個人が自ら技術研さんを積む環境も整える。
一方、資格を持たず、実務経験で要件を満たす技術者については、確認制度により、適正な能力のある技術者の配置を徹底する。現在、実務経験のみで主任技術者の要件を満たす技術者数は把握されておらず、確認制度でその全容を把握する狙いもある。
同制度は、監理技術者資格者証の対象を主任技術者に拡大する形で導入。一定期間ごとに実務経験・保有資格・期限・所属会社の確認を受けた技術者のみが現場に従事できるようにする。制度の対象は元請け企業に所属する主任技術者から段階的に拡大する。確認に必要な料金は実費負担を原則とする。合わせて、技術者個人の不正行為に対する罰則規定も創設する。
さらに、CORINSなどを活用し、保有資格や雇用関係、他の公共工事との兼務を把握している監理技術者についても、チェックシステムを厳格化するよう求めた。
一方、施工体制に入る全ての下請けに対する主任技術者の配置義務は、例外規定による緩和を提言。同じ業種の上位下請けに主任技術者を配置していれば、下位の下請けが主任技術者を配置しないことを認めるなど、複数の下請け企業がチーム単位で現場に従事する体制を新たに構築する。
若手技術者が活躍する機会を広げるため、技術検定制度改革に取り組むことも求めた。技術検定の1級学科試験には、受験要件として実務経験を求めず、2級実地試験合格の翌年度の受験を認める。1級・2級の学科合格者に対する「技士補」の資格を創設し、有資格者にインセンティブを与えることでキャリアステップを階層化する。
提供:建通新聞社