国土交通省は6月22日、民間建築物に使用されているアスベスト(石綿)の使用実態調査や除去などによる対策の推進を求める建築指導課長名の通知を、46都道府県の建築主務部長に宛てて出した。特定行政庁に対しては社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会からの提言を踏まえ、優先的に実態を把握し、除去などの対策を講ずべき建築物を具体的に提示。調査結果を「アスベスト調査台帳」に掲載するだけでなく、社会資本整備総合交付金などによる補助制度を活用し、所有者・管理者による調査・除去の実施を積極的に支援するよう促した。
優先的に実態を把握し、アスベスト調査台帳に記載した上で、除去などの対策を講じるよう求めた建築物は▽1956(昭和31)年〜1989年までに施行された民間建築物のうち、延べ面積が1000平方以上のもの▽1956(昭和31)年〜1989年までに施行された民間建築物のうち、@集会場Aホテルおよび旅館B飲食店、物販店舗その他の用途が含まれる建築物で全体の延べ面積が300平方b以上のもの。これに、地域の実情に応じて優先的に把握すべきと考えられるものも加えた。
対象建築物を把握する際には確認台帳、定期報告台帳、登記簿情報などを活用し、必要に応じて消防部局その他の関係部局とも連携するよう求めた。アスベスト調査台帳の整備の進み具合を見て、今回の事務通知で示した優先的な実態把握を求めた建築物以外であっても「特定多数の者が利用する建築物」については順次、掲載を進めるよう促した。
さらに、アスベスト調査台帳に掲載された建築物については、速やかにその所有者・管理者に調査の実施を求め、調査結果を台帳に反映するよう指導した。また、調査の結果、吹付アスベストなどの使用実態が明らかになった場合には、除去などの対策の実施を建物所有者・管理者に求めるよう指示した。
社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会は、2017年5月に開いた会合で、約130万棟あるとみられる1989年以前に建てられた小規模建築物にも約5〜6%程度の建築物に、吹付けアスベストなどが使用されている可能性があるなどと指摘。
その上で、「対策を実施すべき対象となる建築物の優先順位を定め、建築物石綿含有建材調査者などによる実態把握や、除去などの対策を進める必要がある」などとして、粉じんばく露による新たな健康被害の発生を未然に防止する道筋を示していた。
<用語解説>
特定行政庁―建築基準法で規定された建築の確認申請、違反建築物に対する是正命令など建築行政全般を司る行政機関。建築主事を置く地方公共団体およびその長のこと。
提供:建通新聞社