今年は、「地理空間情報活用推進基本法」が2009(平成19)年に制定されてからちょうど10年の節目に当たります。3月には、この基本法に基づく「地理空間情報活用推進基本計画(第3期)」が閣議決定されました。基本計画は、地理空間情報の活用推進に必要な基本方針や地理情報システム(GIS)・衛星測位などに関して国が取り組むべき事柄を定めています。第1期・第2期の基本計画に基づいて、国は電子地図上の位置の基準となる基盤地図情報や準天頂衛星の初号機(みちびき)を整備し、地理空間情報を活用する基盤の形成に取り組んできました。そして、第3期の基本計画では、昨年度運用を開始したG空間情報センターや、4機体制による本格運用が始まる準天頂衛星システムによって生み出される地理空間情報の活用技術を社会実装することとしています。
政府は、基本計画に盛り込んだ施策のうち重点的に取り組む施策を「シンボルプロジェクト」として位置付け、今後5年間に私たちの仕事や暮らしの中で実現される世界を描いて見せています。例えば、準天頂衛星システムを活用した安否情報や災害関連情報を防災機関で利用できるシステムの構築もその一つです。すでに民間市場では、高精度な3次元道路地図データなどを活用した自動車の自動走行システムの普及や、無人航空機による離島や過疎地への安全で低コストな物流事業も実現に向けた取り組みが進められています。また、屋内の地図についても整備・維持管理を行う体制を検討し、民間事業者による多様な位置情報サービスが生まれやすい環境づくりが進められています。
さらに、電子基準点網などの測位インフラの海外展開を図ることで、i-Constructionをはじめとする高精度測位サービスが海外でも実現し、わが国の優秀な建設技術者が世界規模で活躍できるようになることが期待されています。
これまで1年にわたり、地理空間情報が国土管理に必要不可欠な情報であり、建設業に携わる皆さんの業務と深く関係していることを説明してきました。国土地理院は、この地理空間情報を高度に利活用し、一人一人が「安全・安心」を基盤にして「成長」と「幸せ」を実感できる社会を実現したいと考えています。国土を「はかる、えがく、まもる」活動を通じて、時々刻々と移り変わる地理空間情報の整備とその活用の推進にこれからも努めていきます。(国土地理院)