はや5月も後半となった。この春に就職した新入社員たちは、現場に配属され、先輩の指導を受けながら慣れない仕事に奮闘していることだろう。業界を支え、育てる。その全ての源は生き生きと働く人材にある。人の暮らしと産業の基盤を支える建設業を志し、一歩を踏み出した皆さんを歓迎したい。
国土交通省は建設労働需給調査を行い、鉄筋、型枠、左官など8職種について、建設技能労働者の過不足率を月次ごとに集計している。2017年3月の傾向を見ると、建築の鉄筋工が過剰となっているものの、残りの7職種は全て不足。最も不足傾向が大きいかったのは土木の鉄筋工となっている。もっと建設ものづくりに人をいざなうことが必要だ。
高校進路指導教諭を対象に、高校生がなぜ建設業を応募しないかを厚生労働省が調査している。理由の1位は仕事がきつそう、面白くなさそうというイメージの問題。2位は勤務地や職場環境・雰囲気などの労働条件・環境の問題、3位は休日が少ない、労働時間が長いなどの労働実態への心配、将来性や安定性への不安と続く。
人気のなさに加え、若者の離職率は高い。「七五三現象」という言葉がある。就職して3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職する現象のことだ。16年度の厚労省の若者雇用関連データによると、卒業3年後の離職率は、中学63・7%、高校40・9%、大学31・9%。特に1年以内の離職率が高くなっている。二の足を踏まれがちな建設業の門を叩いてくれた若者たちを、やりがいや仕事への魅力を見いだす前の段階で、去らせてしまってはならない。
働きだしてから1年から2年ほどたった幾人かの若手社員を訪ね、取材をしたことがある。「学校で学んだことを生かしたい」「コンクリート建造物の建設に携わりたい」「出産してからも子育てをしながら職人として働きたい」などと、それぞれが明るく志望動機を語ってくれ、一般的に言われている業界に対するマイナスなイメージは気にならなかったという。
そのうちの一人。鉄筋工の男性は、高校で開かれた地元組合が主催する出前講座で鉄筋と出会った。「こんな仕事があるんだ」と気付き、作業の一端に触れたことで興味を持ち、この道を選んだ。いまでは難しかった結束作業にも慣れ、図面も少し分かるようになってきた。仕事を覚えていくにつれ、ものづくりへの面白みが増し、仕事を任されることで働くことへの喜びを感じているという。
順調なスタートを切った若手社員に共通していることがある。それは、現場で同じ仕事をしながら教育に当たる先輩や、人材育成の視点から成長を見守る経営者が付いていることだ。「長所を褒めて自信を持たせる」「人の仕事を見て覚えろではなく、社員が意欲的に働けるよう一緒になって考える」という、彼らが指摘する人を育てるポイントは、いまの時代に生きる若者と向き合う姿そのものといえる。
より多くの若者が建設業で働く人々と触れる機会を生み出しながら、入ってきた人材を大切に育てていくこと。そこに建設業の未来がある。
提供:建通新聞社