国土交通省は、建設工事の下請けに対する主任技術者の配置義務を緩和する方向で検討に入った。建設業法では、施工体制に入る全ての下請けに主任技術者の配置を義務付けているが、専門工事の業種単位で主任技術者を配置すれば、下位の下請けが主任技術者を配置しないことを例外として認める。主任技術者は配置しなくても、下請け企業としての現場責任者の配置は求める。
5月19日の「適正な施工確保のための技術者制度検討会」にこうした考えを示し、有識者から大筋で了解を得た。6月中旬にまとめる検討会の提言に盛り込む見通しだ。
建設業法では、500万円以上の工事を請け負った建設業者に技術者の配置を義務付けている。全ての建設工事を請け負う建設業者には、元請け・下請けを問わず、資格要件を満たした主任技術者の配置が求められる。
一方、下請けの主任技術者は職長が兼務することも多く、元請けの中にも「技能労働者を配置する下請けには、主任技術者より職長が必要」といった声もある。こうした実態を踏まえ、国交省は検討会に、現場では職長の役割が大きく、施工体制に入る全ての建設業者に主任技術者の配置を義務付けることが必ずしも必要ないとの見解を提示。
同じ業種の専門工事の中で、上位の下請けが主任技術者を配置すれば、下位の下請けにおける主任技術者の配置義務を例外的に緩和する。例えば、電気設備の1次下請けが主任技術者を配置していれば、同じ業種の電気設備の2次以下の下請けは、主任技術者を配置しなくてもよい。ただ、附帯工事の発電機設備などの2次下請けには、従来通り主任技術者の配置義務を課す。
配置義務を緩和する下請けにも、契約上の責任分担、労働法制上の観点で、現場責任者を決めることは求める。
配置義務の緩和に伴い、現場を構成する▽監理技術者▽主任技術者▽職長▽登録基幹技能者▽現場代理人―の定義・役割を建設業法に改めて位置付ける。
国交省はまた、元請けの主任技術者と下請けの主任技術者の役割が異なるとして、現行制度上では同じ資格要件を区分けすることも検討する。現在、元請けには、下請け合計額4000万円(建築6000万円)を基準として、基準額以上で監理技術者、以下で主任技術者の配置義務がある。元請け・下請けの主任技術者は、職務・役割が異なるため、資格要件を明確に区分けすることを検討する。
用語解説「主任技術者の配置義務」
建設業法26条に規定。建設業者は請け負った工事を施工する際、技術上の管理を担う主任技術者を配置しなくてはならない。請負金額3500万円以上(建築7000万円)で求められる専任義務と異なり、配置した主任技術者は他の現場との兼務も認められる。
提供:建通新聞社