アスベスト(石綿)対策が未実施の小規模民間建築物(1000平方b未満)が、国内に約2・3〜3万棟存在している―。国土交通省は、17日に開いた社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会で1989(平成元)年以前に建築された小規模民間建築物130万棟のうち、約4・6〜6・3%に当たる約6・0〜8・2万棟で吹付けアスベストなどが使用されている可能性があり、このうち今後対策が必要な建築物が約2・3〜3・0万棟あるとの推計を示した。部会は「アスベストの使用の有無を確認するスクリーニングを行った上で、建築物石綿含有建材調査者による詳細調査を実施する」スキームなど、早期に民間建築物所有者が適切にアスベストの調査・除去を行えるようにするための仕組みの構築を同省に求めた。さらに建築物所有者・管理者にアスベストリスクを管理・低減することの重要性を効果的に周知し、飲食店やホテル・旅館など不特定多数の人が利用する社会的リスクの大きい建築物などから優先的に使用実態を把握し、効果的・効率的な対策を推進するよう促した。
国交省は部会に対し、大規模民間建築物(1000平方b以上)については、おおむね9割程度は使用実態が把握できているとして、約130万棟あると推計している小規模民間建築物(1000平方b未満)の実態把握と対策の遅れが、特に課題になっているとの認識を示した。
その上で、建築基準法第12条に基づいて全国の特定行政庁が実施した定期報告の結果に、横浜市が市内の小規模民間建築物を対象に実施した調査の結果も加えて補正し推計した、国内の小規模民間建築物における吹付けアスベストなどの使用状況を報告。「1989(平成元)年以前に建築された小規模民間建築物130万棟のうち、今後対策が必要は建築物が約2・3〜3・0万棟ある」とした上で、「06年までは(建築基準法や労働安全衛生法、大気汚染防止法などの)法令によって規制されていなかった」として、「最終的な吹付けアスベストなどが使用されている可能性のある建築物は、この予測値より大きくなる可能性がある」と指摘した。
また、国交省は同部会の意見とワーキンググループでの調査・検討を踏まえて制度設計した建築石綿含有建材調査者の育成状況についても報告。現在、活用が進んでいると考えられる解体・改修に関連する業界に加え、アスベストと関係する可能性の高い不動産の取引や評価などを建築物の通常使用時に行っている不動産関連業界に対しても調査者の活用を促していく考えを示した。
これらの報告を受けた部会は「既存建築物における吹付けアスベストなどの使用状況調査や除去の必要性は依然として高い」として、「地方公共団体は建築石綿含有建材調査者による調査などを通じ、優先順位を定めて実態把握や除去などの対策を進める」よう求めた。
提供:建通新聞社