国土交通省が検討している経営事項審査改正の大枠が明らかになった。「生産性向上」「働き方改革」「地域貢献」に取り組む企業を適正に評価する一方、労働の投入量(人数や時間)などで生産性を図る指標を追加する。従業員の長時間労働是正に対する加点措置、社会保険未加入企業に対する減点の強化も検討する。防災協定を結ぶ企業への加点幅の拡大に加え、建設工事に該当しない維持・除雪を完成工事高に反映させるなど「地域の守り手」としての役割を担う企業の評価を高める。4月28日に開いた建設産業政策会議の企業評価ワーキンググループの席上、こうした方向性を示した。
国交省は、長時間労働是正に伴う工期延長などがコスト増につながるとして、長時間労働に頼らずに生産性を向上させる企業が競争上不利にならない環境を整備する必要性を提示。生産性向上と働き方改革に取り組む企業に高い評価を与える指標を経審に組み込む。
生産性向上については、申請する企業や許可行政庁の負担にも配慮し、労働の投入量(人数や時間)などから生産性の指標を定める。加えて、ICT建機の保有状況や電子商取引の導入状況を「社会性(W点)」を評価することも検討する。
働き方に関する評価では、建設業に時間外労働の上限規制が適用させることを踏まえ、長時間労働の是正に加点措置を与える。社会保険未加入に対する減点は、W点を最大120点減点するものだが、W点の合計がマイナスになっても0点で扱う。未加入企業のW点の合計をマイナスにすることを視野に、減点方法の見直しを検討する。
一方、企業の地域貢献に対する評価を高める。国・地方自治体と防災協定を結ぶ企業には、W点の加点幅を現行の15点から拡大。同じW点で評価する建機の保有状況は、少数でも建機を保有する企業の努力を後押しするため、1台につき1点(最大15点)の加点方法を初めの数台の加点幅を拡大する形に見直す。
建設工事に該当しない維持・除雪は「経営規模(X1点)」の完成工事高から除外されるが、土木一式などの完工高に反映させる。維持・除雪を含めた完工高と含めない完工高を併記し、発注者に企業評価で活用するか判断を委ねる。
改正に合わせ、申請書類の簡素化も図る。建設業許可と経審の申請とともに、許可行政庁における申請内容の確認を電子化。工事経歴書や技術職員名簿の確認書類も削減する。書類の簡素化に合わせ、提出書類のチェック体制の強化、虚偽申請が発覚した際の処分の厳格化も検討する。
この他、自治体の競争参加資格審査で評価すべき項目を周知する。発注者別の主観点を設けず、経審による客観点のみでランク分けを行う自治体が全体の3割に上ることを踏まえ、主観点評価を導入することを働き掛ける。
提供:建通新聞社