国土交通省は、技能労働者らの法定福利費を見込んだ価格で工事を発注するよう、不動産関係など主な民間発注者団体に要請した。適正な請負代金を定めた契約を結ぶことを求めている「建設工事従事者安全健康確保推進法」(建設職人基本法)が、3月16日に施行されたことを受けた措置。建設業の社会保険保険未加入対策の趣旨を踏まえ、法定福利費を盛り込んだ適正価格で発注することに理解を求めた。
国交省が昨年12月に行った調査によると、法定福利費を内訳明示した見積書(標準見積書)を提出した下請け企業のうち、法定福利費の全額を支払われた企業は全体の54%。2年前の調査結果と比べると、19・2ポイント増加しているものの、依然として半数近くの下請け企業が法定福利費を支払われていないか、法定福利費を減額されている。
国交省は、法定福利費が現場の技能労働者にいきわたる環境を整えるためには、民間発注者の理解を得ることが必要になるとして、建設職人基本法が施行された16日付で、土地・建設産業局建設市場整備課長名の通知を民間発注者団体に送った。
建設職人基本法は、建設工事従事者の安全と健康を確保することを国の責務と位置付け、法制上・財政上・税制上の措置を講じるよう求めた議員立法。法律の可決時の附帯決議には、標準見積書を活用するための施策を一層強力に推進すること、社会保険料を適切に支払うこと、などが盛り込まれている。
通知は、受注競争の激化により、本来は固定費であるべき法定福利費が変動化し、請負代金で十分に確保されなかったため、建設業界が標準見積書を活用した法定福利費の確保に取り組んでいると説明。その上で、建設職人基本法の施行で社会保険未加入対策の徹底が一層重要になっているとし、適正な請負代金で契約するよう、民間発注者の理解を求めた。
提供:建通新聞社