文教施設(スポーツ施設、社会教育施設、文化施設)への「公共施設等運営権制度(コンセッション方式)」導入を検討してきた文部科学省の有識者会議は、3月10日に最終報告書案をまとめた。民間事業者による資金調達の円滑化や裁量の拡大など、制度導入のメリットを示した上で、高水準のサービス提供を目指すべきとした。さらに、複数施設を一括して事業化する「バンドリング」など、導入成果を高めるための手法も示した。
コンセッション方式は、施設の所有権を公共主体が保有したまま、民間事業者に運営権を付与する方式。民間事業者の創意工夫を生かした施設の運営・企画・維持管理が可能になると期待されている。
報告書案では、指定管理者制度と比較する形でコンセッション方式のメリットを列挙。運営権の抵当権設定や譲渡が可能なこと、利用料金を定められることなどをメリットとして挙げた。
また、10年以上の長期契約が見込まれることから、長期的運営に基づいた事業計画の策定や、増改築を視野に入れた大規模な投資判断が可能になるなどと指摘している。
指定管理者制度については、コンセッション事業の阻害要因の一つとされている運営権と指定管理者制度の「二重適用」を避けるため、現行法上における整理の在り方を明記した。
コンセッション事業者に施設の使用許可などを行わせる場合、▽対象施設を普通財産化した上でコンセッション事業者に貸し付ける▽行政財産をコンセッション事業者に貸し付ける(施設目的の範囲外の使用に限る)―といった措置を講じれば、指定管理者制度の併用は不要とした。
また、コンセッション方式の導入成果を高めるための施策として、民間事業者へのインセンティブを挙げた。事業者選定時に提案への加点措置を講じ、民間の創意工夫を広く受け入れるのが狙い。バンドリングの採用は、単独では導入が困難な施設を複数一括で事業化することで、集客力拡大や成功可能性を高めることを目的とする。
報告書案はこの他に国による推進方策も示した。文科省による先導的事業への支援、地方自治体向けガイドラインの作成、民間資金等活用事業推進機構の活用促進などが必要と指摘した。
有識者会議は最終報告書を月内にまとめる予定だ。
提供:建通新聞社