道路、堤防などの目に見えるインフラが適切に整備・維持管理されることで、私たちの安全・安心が確保され、社会経済活動は支えられています。普段気付くことはあまりありませんが、実は、地理空間情報の活用を推進するために必要なインフラも私たちの社会の中で重要な役割を担っています。それは、高精度測位を支えるとともに地球規模での位置の基準を定める電子基準点網や測量の成果を集約し、品質が確保された基盤地図情報を整備・提供・更新するための枠組み、最新の地図や空中写真を常時提供するウェブ地図などによって構成されています。
こうしたわが国の知見や経験を開発途上国とも共有し、発展に貢献するため、国土地理院は幅広く国際活動を行っています。
例えば、タイやバングラデシュに国際協力機構(JICA)の専門家を派遣するとともに、バングラデシュやウクライナには講師を派遣しています。また、電子基準点網整備や国家測量事業のノウハウを伝えるため、国土地理院の施設を活用したJICA課題別研修を実施し、毎年のべ20カ国程度の研修員に技術移転を行っています。2国間の情報交換も長らく定期的に行ってきた米国・中国・韓国に加え、近年はベトナムやタイ、インドネシア、ミャンマーなどとも実施しています。
一方、国際連合では「持続可能な開発目標(SDGs)」や「仙台防災枠組2015−2030」が15年に採択されました。これらの取り組みを支援するため、国土地理院の職員は、地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UN−GGIM)での地球規模の測地基準座標系や地理空間情報の防災活用に関する議論に参加しています。
また、その傘下のアジア太平洋地域委員会(UN−GGIM−AP)の議長としても活動し、国連地名専門家グループや国連地名標準化会議でも活動しています。これら多国間の活動の節目として、本年秋にはUN−GGIM−APの第6回総会を熊本で主催します。わが国の地理空間情報インフラが、どのように防災に貢献しているのかを各国の参加者に伝え、アジア太平洋地域の防災能力の強化に貢献していく予定です。(国土地理院)