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2017/02/10

連載「測る、描く、守る」 第16回・国土の変動、衛星で探る

 「国土を測る」というと、測量技術者が観測機器を用いて角度や距離を測定したり、GPSなど測位衛星によって緯度・経度・高さを計測する過程を想像すると思います。これらは土木工事や地図作成に欠かせない技術ですが、近年では、人工衛星や航空機に搭載して、可視光よりも波長が長いマイクロ波で広範囲の地表面の変動を一度に観測できるセンサが開発され、地上の機器を用いることなく「国土を測る」ことができるようになりました。このセンサを合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)といいます。

 電波で測定を行うSARは、可視光を使うカメラとは異なり、雨や曇りの日でも、また夜間であっても地表の様子を観測できます。人工衛星にSARを搭載することで、広大な地表を繰り返し継続的に監視することが可能になったことから、森林伐採の監視、海氷の調査など、多くの分野で活用されるようになっています。また、時間をおいて観測したデータを比べることで、その間に生じた地表面の変形をセンチメートルの精度で精密に計測するSAR干渉解析も行っています。

 国土地理院は、陸域観測衛星「だいち2号」のSARデータを干渉解析することによって、全国の地表面の動きを監視しています。これまでに地震や火山活動に伴う地殻変動、地盤沈下、山間部での斜面変動など大小さまざまな地表面の変動を捉えてきました。

 2015年4月に活動が活発化した箱根山の大涌谷では、地上の機器で捉えることが難しい、わずかな局所変動を明らかにしました。その後の高頻度な観測が明らかにした地表面変動の時間変化は、立入規制区域の設定や解除などのための重要な判断材料となりました。16年の熊本地震では、震源断層に沿って生じた1メートルを超える沈降など、地殻変動の規模や範囲を明らかにし、政府の地震活動の評価や応急・復旧活動に活用されました。こうしたSAR干渉解析の画像は、国土地理院のWEBの地理院地図でご覧いただけます。

熊本地震による隆起と沈降。

 このように、広域を一度に観測できる衛星SARは、地震や火山噴火で変動した地域の把握や、地盤沈下地域での効率的な地上観測の計画策定に加え、今後は道路、橋梁、鉄道、ダム等、人工構造物の変形の監視にも寄与するものと期待されています。(国土地理院)