業種を越えて地域を元気に―。2月3日に農林水産省で行われた「建設業と農林水産業の連携シンポジウム」では、農業などに取り組む地域建設業6社がそれぞれの取り組みを発表。農林水産省や国土交通省をはじめとする関係省庁、全国から集まった地域建設業など250人に上る参加者に、異業種連携による地方創生の可能性を示した。シンポジウムは、農林水産省と建設トップランナー倶楽部(代表幹事・米田雅子慶應義塾大学特任教授)が主催した。
主催者としてあいさつした農林水産省の奥原正明事務次官は、「耕作放棄地の増加、担い手の高齢化などが指摘されているが、意欲のある若い人や企業が参入しやすい環境が整っているとも言える」と、日本農業の現状について認識を示した。その上で、「地域を支える基幹産業である点で、建設業とは共通項が多い」と述べ、両産業のさらなる連携に期待感を示した。
また、同倶楽部の米田代表幹事は、「業種の垣根を越えて力を合わせることが重要。新しいビジネスモデルを知っていただく良い機会」とし、シンポジウム開催の意義を強調した。
事例発表者のうち、皆建(新潟県)の皆川一二代表取締役は、同社が開発した防草緑化一体化シートを説明。環境適応能力が高いスナゴケを活用したもので、歩道緑地帯など使用例が増えていることなどを話した。地元の荒廃農地でのスナゴケ栽培・収穫作業を中心に雇用している皆川氏は、「スナゴケのさらなる生態調査、出荷納期の短縮などを行っていっく」などと、今後の取り組みについて説明した。
幌村建設(北海道)の幌村佑規副社長は、高品質なアスパラガス栽培を通じた地域おこしを紹介。「地元の研究機関や行政との連携を通じて品質の確保や、販路の拡大に努めている」と話し、差別化戦略を推し進めていく考えを示した。
地域連携による循環型農業の実現をテーマに発表したのは、愛亀(愛媛県)の大森孝宗常務執行役員。公共事業が減少する中、「縮小均衡に経営の舵を切りたくなかった」と、農業参入に至った当時を振り返った。地域との関わりは、有機肥料製造のための畜産農家との連携、障害者施設への作業依頼など、多方面にわたっていることへの気付きを促していく必要を指摘した。
シンポジウムではこの他、山本建設(熊本県)の山本祐司社長が「うなぎの養殖事業」、日本建設技術(佐賀県)の原裕社長が「ミラクルソルによる有明海再生と間伐材利用の軟弱地盤対策」、
たかやま林建(岐阜県)の長瀬雅彦専務理事が「森林の多機能利用で地域おこし」と題し、それぞれの取り組みを発表した。
提供:建通新聞社