国土交通省は、大規模災害発生時の災害査定期間を大幅に短縮するための「事前ルール」を定め、1月13日に公表した。激甚災害(本激)に指定された災害について、被災調査段階で査定作業の簡素化を周知するもの。これにより、測量・設計に要する期間を短くし、災害復旧工事の早期着手が可能になるという。今後の発生災害から実施する。
大規模災害発生後のインフラの迅速な復旧に向けて同省では、書類のみで行う「机上査定」の限度額引き上げや、事業採択を本省で行う「採択保留」の額の引き上げ、さらに航空写真や標準断面図を活用した設計図書作成といった簡素化策をこれまで講じてきた。
しかし、個別の災害ごとに簡素化の内容を決めていたため、査定決定までに多くの時間を要してきた。また、簡素化周知を測量・設計段階で行っていたことから、作業の手戻りも生じていた。このため、「事前ルール」に基づいたさらなる簡素化を目指すことになった。
ルールでは対象について、激甚災害(本激)に指定、または指定の事前公表(中央防災会議の意見聴取段階)がされた災害とし、災害規模に応じて2分類している。政府の緊急災害対策本部が設置された災害はカテゴリーS(過去事例・東日本大震災)、それ以外はカテゴリーA(同・熊本地震、阪神淡路大震災など14災害)とする。
災害査定続きの簡素化内容はカテゴリーによって異なる。原則300万円としている机上査定限度額は、Sの場合、被害件数の約9割をカバーする金額にまで引き上げる(Aの場合は被害件数の約7割)。これにより、査定期間を短縮できるとしている。
採択保留額は、採択保留件数の約9割(Sの場合)と約6割(Aの場合)をカバーする金額まで引き上げる。原則4億円としている金額を引き上げることで、作業の早期着手を見込む。
設計図書の簡素化については、カテゴリーを問わずに行い、測量・設計期間を短縮させる。
今回の事前ルールを熊本地震で被災した実際の公共土木施設に当てはめたところ、通常の簡素化を行った場合に比べて19日、全く簡素化を行わなかった場合に比べ43日短縮できることが分かったという。
なお、農林水産省もほぼ同様の事前ルール化を定め、同じく1月13日に公表している。
提供:建通新聞社