技能者の資格や就労実績を現場ごとに蓄積する「建設キャリアアップシステム」の構築を検討する官民コンソーシアムが12月21日に開かれ、システム開発に向けた大枠が固まった。技能者は運転免許証などで確認し、真正性を担保した本人情報をシステムに登録。3000円程度の実費負担で、有効期間10年のICカードを発行する。事業者にも企業規模に応じて5年に1度の登録料と毎年のシステム利用料を徴収する。同日の会合でシステムの運営主体に決まった建設業振興基金は、年明けにシステム開発の調達に着手。2017年秋のシステム運用を目指す。
建設キャリアアップシステムは、技能者の経験を蓄積することで、技能者の技能レベルに応じた処遇など就労環境改善を目指す。国土交通省、建設業団体、学識経験者でつくるコンソーシアムの作業グループで、システムの要件定義書や調達仕様書を検討していた。
システムには、技能者の本人情報(住所、氏名、生年月日、性別、国籍)や社会保険加入状況、建退共手帳の有無などを登録。技能者を雇用する元請け・下請けも事業者情報(商号、所在地、建設業許可情報)を登録する。
元請けは、現場開設時に現場情報を登録し、技能者は現場入場時にカードリーダーでICカードを読み取り、日単位の現場入場実績を登録する。
技能者に交付するICカードは、運転免許証などで本人確認を行う。登録料は約3000円、有効期間は10年とする。技能者の技能に応じてカードの色分けを検討しており、登録基幹技能者はゴールドカードとする。事業者がシステムを利用する際は、企業規模に応じた登録料とシステム利用料を求める。
システム利用料金を負担した事業者は、技能者本人と技能者が所属する事業者が同意した範囲で技能者情報を閲覧できる。
国交省は、技能者の就労実績、保有資格が統一的に蓄積され、優れた技能のある技能者を雇用する専門工事業者への選択が進む環境が整うと説明。システムに蓄積されたデータを基に、統一的な技能者の能力評価基準も策定する。将来的には技能や職歴に応じた賃金体系を実現するため、公共工事設計労務単価を技能レベルに応じて設定することも視野に入れている。
今後、運営主体に決まった建設業振興基金がシステム開発の調達手続きに入ることに加え、年明けから全国で説明会も開く。国交省、厚生労働省、コンソーシアムの参加団体による「建設キャリアアップシステム運営協議会(仮称)」を発足させ、システムの運営方針や各団体の出捐金などについて話し合う。来秋の運用開始後1年で技能者約100万人の登録、5年後に全ての技能者の登録を目指す。
提供:建通新聞社