厚生労働省は、社会福祉法人制度改革を目的とする社会福祉法改正および関係政省令の改正を2017年4月1日に施行する。このため、評議員の選任や会計監査人の設置などによる内部管理体制の整備など、経営組織見直しの留意点について、社会援護局福祉基盤課から47都道府県と政令市、中核市に向けた事務通知を発出した。経営組織のガバナンス強化、財務規律の強化などを目的とした同制度創設以来の大改革が実質的に動き始めた。
制度改革の最大のポイントは、議決機関などの見直しによる社会福祉法人の意志決定プロセスの透明化と、会計監査人の設置などによる内部管理体制の適正化。
このうち、議決機関のあり方については、外部委員が参加する評議員の選任・解任する機関を設置した上で、この機関の決定に従い「社会福祉法人の適正な運営に必要な見識を有する者」を選任するよう求める。
親族などの特殊関係者の理事などへの選任を制限する一方、一定規模以上の法人には会計監査人の設置を義務付けることで、理事・理事長に対するけん制機能を働かせる。財務諸表や役員報酬基準の公表などについても法律に明記し、事業運営の透明性を向上させる。
役員については、理事には、理事本人を含め、その配偶者および三親等内の親族その他の理事と特殊の関係のある者(理事の親族等特殊関係者)が、理事の総数の3分の1を超えて含まれてはならないこととする。
会計監査人の設置と内部管理体制の整備は、前年度決算で収益が30億円あった法人、または負債が60億円を超える法人を対象として義務付ける。
また、財務規律も強化し、社会福祉法人改革に至る原因の一つにもなった内部留保の肥大化や、不透明化への批判に応える。
具体的には、基本金と国庫補助等特別積立金を除いた社会福祉法人が保有する全ての財産を対象に、事業に活用する土地や建物、建物の建て替え費用や修繕費用、手元流動資金など「事業の継続に必要な最低限の財産」と、施設の新設・増設や新たなサービス展開などに「再投下可能な財産」に区分。
その上で、社会福祉法人に対し、それぞれが地域のニーズに応える新たなサービス展開や人材への投資などを盛り込んだ「社会福祉充実計画」(再投下計画)を策定し、内部留保を福祉サービスの提供に再投下することを求める。
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建通新聞社