厚生労働省の有識者会議は10月26日、水道事業の維持・向上に向けた報告書(骨子案)をまとめた。老朽化・耐震化費用の増大といった課題に対応するため、施設台帳整備の義務付けや、「公共施設等運営権制度(コンセッション方式)」をはじめとする官民連携、広域連携など具体的な方策を盛っている。指定給水装置工事事業者制度については、指定期間5年間の「更新制」導入が適当とした。
人口減に伴う料金収入の減少や、施設の老朽化による更新需要の増大など、水道事業経営を取り巻く環境は厳しさを増している。技術職員の高齢化もあり、災害時の対応も不安視されている。さらに、指定給水装置工事事業者制度も課題を抱える。事業者数が大幅に増えたことで、営業実態の把握や技術指導などが困難になっているためだ。
骨子案にはこうした状況を踏まえ、適切な資産管理、官民連携、広域連携、指定給水装置工事事業者制度の改善など具体的対応策が盛られた。このうち、資産管理については下水道や河川などと同様に、施設台帳整備を水道事業者・水道用供給事業者に義務付けるべきとした。一定の頻度(5年に1回など)の下、近接目視による施設点検も必要としている。
官民連携ではコンセッション方式について、水道事業者にとって「現実的な選択肢」となり得るよう、法制面で必要な対応を行うべきとした。また、民間企業が将来の更新投資に備えるための税制措置の必要性も指摘している。
広域連携は、都道府県がその推進役を担うべきとした。水道事業者などを構成員として、事業統合や施設の共同化などを協議する場を設置できるよう、法律を整備することを求めた。広域連携を行う事業者は、具体的な実施方針を盛り込んだ推進計画を策定することになる。
指定給水装置工事事業者制度の改善は、トラブル防止や工事事業者の資質保持を目的とする。具体的には、指定有効期間(5年間)を設ける更新制を導入する方向。導入に当たっては、水道事業者や優良な指定工事事業者にとって、過度な負担とならないよう求めている。
有識者会議による検討報告書は年内にまとまる見込み。厚労省は、それを基に水道法改正案をまとめ、2017年通常国会への提出を目指す方針だ。
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建通新聞社