9月1日は「防災の日」です。2016年4月には熊本地震が発生。95名(総務省消防庁発表、8月18日時点)の尊い命が失われ、多くの方々が被災しました。住宅や建物、道路、河川、鉄道、港湾などのインフラも大きな被害を受け、自然災害の脅威が「すぐそこにある」ことをあらためて強く認識させられました。
災害の発生直後は、どのような規模の被害が、どこで発生しているのかを迅速に把握し、共有することが重要です。航空機から写真を撮影した写真を判読し、被災箇所とその程度を地図上に分かりやすく示すことが、救命救助や被害の拡大を防ぐ上で大きな役割を果たします。
国土地理院は、最大震度7を観測した翌日4月15日の朝から、自ら所有する測量用航空機と、協力協定を結んでいる民間測量会社が保有する航空機を動員して緊急撮影を行い、約1万枚の航空写真を撮影しました。震度5強以上を観測した地域を基本として、GPS衛星などを用いた地殻変動の監視結果や、地球観測衛星「だいち2号」のデータを用いた面的な地殻変動の解析結果を参考にして撮影範囲を決定しました。このようにして得た地殻変動情報は、地震像の解明にも大いに役立っています。
判読した土砂崩壊地や地表の亀裂を写真と地図に重ね合わせて表示させた結果、土砂崩壊地の分布は、熊本県南阿蘇村立野・河陽地区とその周辺、および阿蘇火山の西麓、西南麓に集中していることが明らかになりました。
益城町や西原村付近では、都市圏活断層図「熊本」で示されている布田川断層帯の断層線付近に断続的に亀裂を確認。こうした情報は国土交通省のTEC-FORCEらの現地調査の資料となったほか、土砂災害の発生を警戒するための資料としても活用されました。
また、布田川断層帯と日奈久断層帯の周辺では、地盤の上下変動を面的に把握するため航空レーザ測量を行って精密な標高データを整備。熊本城の石垣の崩落や変形をドローンによる撮影と地上型レーザによって精密に計測するなど、技術的な支援も行いました。
現在、災害復旧などの事業を支援するため、地殻変動の影響を受けた地域の測量の基準である電子基準点の測量成果の改定を終え、基準点(三角点、水準点)の復旧測量、地形の変化、仮設住宅建設の状況などを詳細かつ正確に反映した2,500分の1の応急復旧対策基図の整備を進めています。
こうした取り組みの成果は、関係機関に提供する一方、国土地理院のホームページ「平成28年熊本地震関連情報」でも公開しています。建設分野でも役立つ技術であり、情報です。ぜひ御覧ください。(国土地理院)
提供:
建通新聞社