2016/09/06
「激化する豪雨と戦う地域建設業」(3)〜第11回建設トップランナーフォーラム〜
山地崩壊への新たな取り組み
地域を知るプロとして対応
激化する豪雨はしばしば大規模な土砂災害を引き起こす。山地崩壊に対する新たな取り組みを、豊明建設(鹿児島県)の林正英社長、天竜建設業協会(静岡県)の長谷川智彦会長、丸新志鷹(富山県)の志鷹新樹社長が報告した。
火山噴火で形成されたカルデラが現存し、そこから噴出した火砕流の堆積物などが積み重なったシラス(白砂)台地が広がる鹿児島県。豊明建設の林社長は、豪雨のたびに起きるカルデラ壁の深層崩壊と戦う地域建設業の姿を紹介した。
姶良カルデラのある錦江湾沿いの国道220号(垂水市)は、急峻で脆いカルデラ壁の下を這うように走る。シラス台地を形成する火山性土壌は、堆積層の構造や風化の度合いで深層崩壊が起こりやすく、たびたび国道を寸断する大規模な土砂崩落が発生。地域建設業が復旧に奮闘した。
豊明建設の林社長は、建設業がプロ集団として災害に立ち向かう必要性を訴えた。そして、地域の災害の特性の把握の重要性を第一に挙げたほか、社員の防災意識の高揚や協力会社との信頼関係構築の大切さを指摘した。
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地すべりで埋塞した河川の仮設排水路の掘削に際し、地権者の同意や補償物件調査、用地境界測量などの事前調整を発災当日の午前中に完了。測量と並行して施工を進め、発災から20時間後に完成させた。
天竜建設業協会の長谷川会長は、協会員によるこれらの取り組みに触れ、「地元業者だからこそできること」と胸を張った。
そして、「過疎化が進む中山間地域でも、最低限のインフラの維持管理は必須」と訴え、技術職員が官民ともに減少する中、「官民が協働し、地域の安全・安心を確保するための体制づくりを整えなければならない」と主張した。
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建設市場の縮小による国内の厳しい受注環境が続く中、地方を拠点とする中小建設業にも海外市場に果敢にチャレンジし、実績を上げる企業が現れてきた。
「立山砂防の経験が施工に生かされている。今後も日本の高い技術を世界に広める手伝いをしていきたい」。丸新志鷹建設の志鷹社長は、独自の技術力を生かした海外展開に意欲を見せる。
92年、ネパールの首都カトマンズに支店を開設。2004年には国際入札に参加し、首都カトマンズに飲料水を送水するためのアクセスロード建設工事を落札。当初18ヶ月を予定していた工期が、クーデターや反政府勢力による妨害などで6年5ヶ月に及ぶ困難を経験。
それでも粘り強く工事を完成させたことが評価され、その後、JICAの学校支援プロジェクトや小水力発電所工事、ブータン王国での国道工事の受注などにつながった。
(地方建設専門紙の会)