2016/08/26
「激化する豪雨と戦う地域建設業」(1)〜第11回建設トップランナーフォーラム〜
地域防災の担い手に焦点
高まる建設業の役割への期待
新たな事業分野への進出や技術開発に取り組む建設業の経営者などで組織する建設トップランナー倶楽部(代表幹事・米田雅子慶應義塾大学特任教授)は、「激化する豪雨と戦う地域建設業」をテーマに、第11回建設トップランナーフォーラムを6月、東京都内で開いた。米田氏はフォーラムの冒頭、地震活動の活発化や、気候変動による記録的な豪雨・豪雪災害の多発など、日本の自然災害の現状に関して「高まる災害外力からどのように地域の暮らし、社会基盤を守るかが地域建設業の大きな課題だ」と強調した。
災害発生時の初動対応や緊急復旧での活躍に期待が寄せられている地域建設業。米田氏は、これまでインフラの町医者を目指し、「地域防災の担い手」「社会インフラの守り手」「複業による雇用の支え手」としてチャレンジし続けてきた建設トップランナー倶楽部のメンバーの活動を話した。そして「今回のフォーラムは地域防災の担い手″としての役割を取り上げ、全国規模で多発する豪雨災害にスポットを当てる」と述べた。
その上で、豪雨と戦う地域建設業の「事例発表」や、豪雨の予報・対策、リスクコミュニケーションのあり方などを探る「鼎談(ていだん)」、基盤整備や官民連携のあり方を議論する「パネルディスカッション」を行うことを説明。「本フォーラムが日本列島で起こる豪雨災害の軽減に、少しでも寄与するものになることを願う」と訴えた。
来賓として訪れた国土交通省技監の森昌文氏は「ここ数年間、建設産業の経営環境を良くしていくため、ダンピング防止などに取り組んできた。それは担い手を育成するとともに、若者が入職してくれる環境をつくるためだ。労務単価はかなり引き上げた。今後さらに、発注の平準化などを通じ、地域の担い手がしっかりと仕事ができるよう、国交省を挙げて取り組んでいきたい」と述べた。
また、元農林水産省事務次官の皆川芳嗣氏が、これまでの建設トップランナーフォーラムを振り返り、「地域の守り手が一体だれなのか明らかになってきている」と、地域建設業の存在意義を強調。その上で「南海トラフ地震は何十年かのうちに必ず起こる」とし、「地域の中で実力のある、まさに手足となって動ける組織がなければ、この国の安全・安心な生活は成り立たない」と訴えた。
内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏は、「皆さんは社会資本整備や国土強靭化を最前線で支えているメンバー」とフォーラム参加者を称えた。その上で、安倍政権が打ち出す国土強靭化政策の横断的なテーマが▽ハード・ソフトの組み合わせ▽官民連携▽民間の主体的な取り組み―であることを挙げ「まさに皆様方に対する期待そのもの」と強調した。
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第11回建設トップランナーの模様を5回に分けて連載します。
(地方建設専門紙の会)