国土交通省は、建設業の重層下請構造の発生要因を明らかにする調査を開始する。昨年度に施工体制台帳のデータを活用して行った定量的な調査に続き、現場単位で元下間の役割分担や施工管理状況をアンケート形式で尋ねる定性的な調査を実施する。雇用する技能者を外部化して一人親方として請負関係を結ぶなど、重層下請構造によって生じる課題を明らかにするのが狙いだ。
昨年度の調査は、施工体制台帳や作業員名簿の作成を支援する「グリーンサイト」の運営者であるMCデータプラス(東京都)に委託され、約1万現場の施工体制を調査。対象の現場の7割が1〜3次下請けで完結するなど、想定されたほど重層化が進んでいない現状が浮き彫りになっていた。
ただ、調査結果が報告された中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会では「専門工事業にある『班』や『応援』といった実態も踏まえて調査すべき」といった声が挙がった。社会保険加入を回避するため、雇用していた社員を一人親方として外部化することで重層化が進んだり、請負関係にある下請けが実態として上位下請けに雇用されているように扱われているとの指摘は以前からある。
このため16年度の調査は、アンケートで重層下請構造の発生要因を分析する形へとシフトする。建設業団体に調査協力を依頼して約100件の現場を抽出、現場ごとに下請けも含むすべての建設業者にアンケート調査を行う。
アンケートでは、下請構造とその形成に関わると想定される▽下請次数▽工種・規模▽下請けに発注する理由▽下請けの選定理由▽元下間の役割分担▽施工管理状況▽自社労働者数―などを回答してもらう。調査結果は統計的な分析を重視するため、個別の現場状況には触れない。
調査の委託先を選定した上で、9月にも調査を始める。建設業の重層下請構造については、今秋に設置し、建設業関連制度の枠組みを検討する有識者会議でも議論の対象となる。今回の調査結果も、順次この会議に報告していく方針だ。
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建通新聞社