厚生労働省は、水道事業のアセットマネジメント(長期的視野に立った計画的な資産管理)を進めるための対応案をまとめた。更新需要と財政収支見通しの試算を一部の水道事業者が行っていないなどの現状を踏まえ、施設台帳の整備や維持修繕・点検を義務付けたり、試算の活用を促す内容。
アセットマネジメントは、水道事業経営を安定的に継続するために必要とされている。施設の状況を把握した上で、中長期的な更新需要や財政収支を見通し、施設整備・財政計画を作成する流れとなる。
ただし、厚労省による調査結果では、全水道事業者の約35%に当たる520事業者が更新需要と財政収支の見通しを試算していないことが明らかになっている。その9割弱が給水人口5万人未満の水道事業者で、「人員、時間がない」「予算がない」「資産データがない」状況だ。
さらに、試算済みであっても、「更新需要の精度が低く、施設整備計画や財政計画の根拠として使用できない」との理由から、半数の事業者が結果を十分に活用していないという。更新需要の精度の低さについては、「日常の運転管理・点検調査や施設の診断・評価が不十分が要因」との指摘もある。
このため、対応案では試算実施の促進や活用を進める方策を示した。人員や時間、予算の不足に対しては、更新需要や財政収支の見通しを試算できる「簡易支援ツール」の活用を挙げた。支援ツールは2013年6月に作成されたもので、活用拡大に向けた講習会も行われている。
施設台帳の整備は、「施設データがない」との声に応えるためのもの。河川や下水道など他の社会資本と同様に、事業者による整備が必要とした。さらに、水道事業者による施設の維持修繕・点検を求め、試算結果の活用を促すことにしている。
対応案は、有識者会議(水道事業の維持・向上に関する専門委員会)で検討してきた。同会議では、指定給水装置工事事業者制度への更新制導入や広域連携を含めた水道事業の在り方について、11月ごろに報告書を作成する。厚労省は、それを基に水道法改正案をまとめ、17年通常国会への提出を目指す。
提供/建通新聞社