国土交通省が設置した「地盤改良工事の施工不良等の問題に関する有識者委員会」(委員長・大森文彦東洋大学教授)は8月2日、東亜建設工業が空港施設の地盤改良工事で行った施工不良に関する再発防止策をまとめ、同省に提言した。提言では、今回の施工不良・虚偽報告に対し、現在の監督・検査が十分に機能していないとして、発注者に抜き打ちでの現場立ち会いや事後ボーリングの別途発注などを求めた。
有識者委員会は、施工不良と虚偽報告が確認された「曲がり削孔」と「バルーングラウト工法」で、これまでの性善説を前提とした監督・検査が十分に機能しなかったと分析。
これまで、現場の監督・検査は工事の工程管理に影響を与えるため、基本的に事前に受注者に連絡して監督職員が立ち会っていた。提言では、事前準備などの効率性を確保するため、これまでの監督・検査には一定の合理性があるとしつつ、抜き打ちを交えて現場立ち会いを行うことが適当と指摘した。
これまで、地盤の強度を確認する事後ボーリングは受注者が行っていたが、今回のケースでは採取された供試体を差し替える偽装行為が行われた。このことから、受注者による差し替えの可能性を排除するため、発注者が受注者と資本関係のない調査会社に事後ボーリングを別途発注するよう求めた。
提言では、今回の不正で発注者が新技術の採用に必要以上に消極的になり、企業の技術開発への投資意欲がそがれることを懸念。このため、新技術活用システム(NETIS)や民間の技術審査証明制度の活用などに加え、新技術を採用する際に専門家による委員会を立ち上げ、客観的な評価を行う仕組みを検討することも求めた。
この他、施工不良が行われた空港施設の修補については、工事ごとに有識者委員会を設けた上で、綿密な地盤調査や試験施工を通じ、施工方法を決めることが必要だと指摘した。
提供/建通新聞社