国土交通省は、災害発生時の市町村支援について話し合う有識者懇談会を立ち上げ、7月21日に初会合を開いた。関東・東北豪雨や熊本地震では、市町村が迅速に災害に対応できず、被災状況調査や応急復旧工事、災害査定などの遅れを招いた。技術職員不足や職員の経験不足を補う国の支援策の強化や民間の技術者・組織の活用などを論点に議論し、12月に提言をまとめる。
気候変動などを理由に、1日当たり400ミリを超える降雨の観測回数は年々増加傾向にあり、近年でも、2012年の九州豪雨災害、14年の広島豪雨災害、15年の関東・東北豪雨など激甚な災害が頻発している。
一方、財政状況の悪化や行政改革の流れで、地方自治体の土木関係職員は減少傾向にあり、町の55%、村の86%が技術職員5人未満の状態にある。
実際、関東・東北豪雨では、宮城県、福島県、栃木県、茨城県の市町村所管施設の被災状況調査が1カ月以上掛かり、その後の復旧に遅れが生じた。
応急復旧に当たる建設企業との連携も十分でない。関東・東北豪雨で被災した福島県南会津町では、町内の広範囲で被害が生じたため、応急復旧を行う建設業者を県と町が取り合う格好になった。大半の都道府県は建設企業との災害協定を結んでいるものの、協定を結ぶ市町村の数は1割に満たないため、応急復旧などに迅速に着手できない現状にあるという。
国交省は、被災状況調査、応急復旧工事、測量・設計、災害査定、本復旧工事の遅れを招くこうした現状の要因が、各市町村の技術職員不足、大規模災害に対する経験不足、技術力不足の3点にあると分析。有識者懇談会の初会合では、テックフォースをはじめとする国の支援策の強化に加え、都道府県から市町村への応援協力体制を強化する必要性なども示した。
また、災害協定などを例に民間の技術者・組織を効率的に活用することも論点として提示。熊本地震では衛星画像やドローンを活用した被災状況調査なども行われたことから、人員不足をICT技術で補う方針も示した。
有識者懇談会は、9月中旬に開く次回の会合で、大規模な災害を経験した市町村の実情や課題などをより詳細に把握。12月まで計4回の会合を開き、今後の市町村支援の在り方について提言する。
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建通新聞社