国土交通省は14日、民間工事の受発注者が施工上のリスクを回避するための「民間建設工事の適正な品質を確保するための指針(民間工事指針)」をまとめ、建設・不動産の関係団体に通知した。指針には、受発注者が情報共有すべき、地中・設計・資材などに関連する12項目の「協議項目リスト」を盛り込み、請負契約に先立って各項目のリスク負担を協議するよう促す。契約時点では正確に想定できないリスクによって追加コストや工期延長が発生した場合でも、受発注者が対応できる枠組みを整える。
指針は、土地・建設産業局の不動産業課長と建設業課長の連名で、不動産協会、全国住宅産業協会、住宅生産団体連合会の不動産関係の団体と、建設業105団体に通知した。
基礎杭工事問題で明らかになった『建設業の構造的課題』への対応策を検討してきた中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が策定を求めていたもの。民間企業が発注する建設工事を対象に受発注者間の情報共有や協議プロセスの枠組みを示した。
協議項目リストは▽地中▽設計▽資材▽周辺環境(近隣対応など)▽天災(地震、台風、洪水など)―などに関連する12項目で構成。このうち、地中と設計は、事前協議が施工上のリスクを防ぐために有効だとして、「特に留意が必要な項目」と位置付けた。
地中関連では、発注者が支持地盤の深度などの地盤状況を事前に調査し、調査結果を踏まえて設計者が適切に基礎の設計を行う必要があると記述。その上で、事前調査を行っても想定できない現場不一致が起きた際の追加費用や工期延長の負担を受発注者が協議すべきなどとした。
設計関連では、発注者が工事に必要な設計・仕様などの情報を開示し、設計者がそれを踏まえた精度の高い設計図書を作成することが求められると記載。設計時点で細部が確定しないケースでは、施工上のリスクに対する認識を関係者が共有し、あらかじめ協議することが必要だとしている。また、設計図書では施工段階での調整を見込まざるを得ないケースでは、請負代金や工期を契約後に変更できるよう、事前に協議すべきとした。
指針では、これらの項目を受発注者が適切に協議できるよう、発注者が見積もりを依頼する段階で、適正な見積条件を見積要項書や仕様書などに盛り込むとともに、質問回答や協議の機会を設ける重要性などについても指摘している。
提供/建通新聞社