国土交通省は、技術職員不足に陥っている公共建築工事の発注者への支援策を検討するよう、社会資本整備審議会に諮問した。社整審の官公庁施設部会(部会長・大森文彦東洋大学教授)が8月上旬から検討を始める。品確法に位置付けられた発注者責務や建築固有の課題などを踏まえ、公共建築工事の発注者が果たすべき役割・責務を整理した上で、必要な支援策を提言する。年内に答申をまとめる。
国交省や都道府県・政令市でつくる全国営繕主管課長会議が行ったアンケート調査によると、全国の市町村のうち、営繕の技術職員(建築、電気、機械)の在籍がゼロの市町村は27.9%を占める。5人未満まで広げると、その割合は70%を超えており、市町村の体制・技術力が十分でなく、適切に事業を実施することが困難になっている現状があらためて浮き彫りになっている。
国交省は、品確法が「適正な予定価格の設定」や「適切な工期の設定」などを発注者責務と位置付けたこと、基礎杭工事問題で発注者・設計者・施工者がそれぞれの役割・責任を果たす必要性が指摘されたことを背景に、公共建築の発注者の在り方を整理する時期にあると判断し、社整審に支援策の検討を求めた。
部会ではまず、建築工事の特徴を踏まえ、公共建築の発注者の在り方を整理する。建築工事は、民間市場が9割を占めるため、発注者が予定価格を設定する際、土木工事よりも民間市場の実態を反映させる必要がある。意匠・構造・電気・機械などに専門分野が細分化していたり、建築基準法・建築士法に基づいて設計・監理を行っていることも建築固有の課題だ。
発注者の在り方を整理するとともに、発注者と設計者・施工者・工事監理者との現在の役割分担も検証。事業の各段階{企画、調査、設計、施工)における発注者の役割と責任を明確にする。
その上で、発注者が責任・役割を果たすために不足している技術力・体制を補う国の支援策を検討してもらう。国交省では、これまでも営繕工事の積算基準を解説する「営繕工事積算活用マニュアル」、設計変更ガイドライン、公共建築相談窓口などの支援策を講じており、年内にまとまる答申を踏まえ、支援策の充実を図る方針だ。
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建通新聞社