国土交通省は、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会を開き、建設業の構造的課題に対する中間報告の大筋を固めた。基礎杭工事問題で明らかになった課題に対し、一括下請負の判断基準見直し、監理技術者などの役割の明確化といった具体策を盛り込んだ。同委員会は、10年後の技能労働者数が44万人減の286万人になるとの予測も明らかにし、建設市場規模の推計を踏まえると、47万〜93万人の技能労働者が不足すると試算。建設産業が「人材投資成長産業」を目指すべきだとして、処遇改善やキャリアパスの見える化などを重点的に進めるよう求めた。
中間報告では、建設生産システムの適正化を図るため、監理技術者制度運用マニュアルを見直し、監理技術者と主任技術者の役割を明確にしたり、大規模工事に技術者を複数配置することを推奨するよう提言。実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除するため、一括下請負の判断基準も見直すとした。
合併する企業の建設業許可・経営事項審査の手続きを迅速化するほか、廃業した企業の技術者を受け入れる際に経審上の特例措置を設けるなど、建設企業の持続的な経営環境を整備する必要性を指摘した。
一方、国交省は、中間報告の検討に伴い、中長期的な技能労働者の確保・育成を図る前提となる10年後の技能労働者数を初めて試算。技能労働者が堅調に推移した2010〜15年度の変化率が続くと仮定しても、10年後の技能労働者は44万人減少し、286万人になるとした。
その上で、建設市場の規模に合わせた技能労働者の不足数も試算。名目GDP成長率が1%台半ばで推移した場合は93万人、ほぼ横ばいの成長率でも47万人が不足することになるという。
国交省はこの試算に合わせて、今後10年の技能労働者確保の目安も提示。入職・定着が高水準だった時期と同じ増加率で推計しても、技能労働者は若年層・中堅層(34歳以下)で15万〜28万人、中堅層(35歳以上)と高齢層で21万人を確保できるに過ぎず、不足分を生産性向上で補う必要があると指摘。仮に生産性が1割向上すれば、30万〜34万人の技能労働者に相当すると試算している。
中間報告は、他産業との人材獲得競争が厳しさを増す中、建設産業が人の投資を柱に成長する「人材投資成長産業」となるよう提言。具体的には▽処遇の改善▽キャリアパスの見える化▽社会保険未加入対策▽教育訓練の充実▽イメージアップ戦略・先鋭的プロモーション▽生産性向上に向けた人材の効率的活用の推進―の6分野で重点的に施策を推進するよう求めた。
このほか、重層下請構造については、施工に関する役割や責任の所在が不明確になるといった問題意識を提示したものの、広範にわたる課題であるとして「引き続き、さらなる検討を深めることが必要」と記述するにとどめた。
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建通新聞社