勤労者退職金共済機構・建設業退職金共済事業本部(建退共、稗田昭人本部長)は、6月の運営委員会・評議員会で「建退共制度の在り方検討状況」を報告した。在り方検討を行う有識者会議での事務局案と言えるもので、現行の証紙貼付による掛金納付方式に加え、「口座振込・振替方式」を導入する内容。現場での就労実績の把握や報告などには「建設キャリアアップシステム」の活用も視野に入れている。8月の第3回有識者会議以降、新方式導入に向けた議論が本格化することになる。
現行の証紙貼付方式は、建設事業主(共済契約者)が労働者(被共済者)の働いた日数に基づき退職金共済手帳に証紙を貼付する。労働者にはそれに応じた退職金が支払われる仕組みだ。しかし、証紙を購入するために金融機関に出向く必要があることや、手帳への証紙貼付に対して「煩雑で前時代的」などの指摘があり、制度の見直しを求める声が上がっていた。
このため、建退共では4月に有識者会議(座長・村上正人みずほ年金研究所理事長)を設置。掛金納付方式や退職金給付などを検討し、今秋をめどに一定のとりまとめを行うことになっている。
「口座振込・振替方式」は、議論を進める上での“たたき台”となるもので、元請企業が開設した口座を通じて掛金を納付することになる。掛金振込と同時に金融機関が掛金収納書を発行する流れ。現場での就労実績の把握や、元・下間の報告はそれぞれの現場に応じた方法を任意で選択できることになっている。
この他、現在は日額310円のみとなっている掛金を複数設定できるようにする。労働者の職種や職責に応じて退職金水準を充実するため、さらに高額の掛金1種類を設定する方向。
運用収入の労働者への還元方法も見直す。現行の基本退職金に加えて付加退職金を導入。運用利回りが予定運用利回りを上回った場合、上積みする内容だ。
事務局案では、国土交通省や業界団体が構築を進める「建設キャリアアップシステム」への対応にも触れている。同システムを導入した現場では、建退共の加入率を基に、掛金納付額を調整するとした。
また、現行方式に習熟している共済契約者などに対応するため、証紙貼付による掛金納付方式は存続させる方針だ。
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建通新聞社