測量技術と地理空間情報には、ICT(情報通信技術)など他の科学技術との組み合わせによる新たなサービスの創出が期待されている。全体最適を目指すこれからの建設生産システムにとっても、ますます欠くことのできない技術・情報、そして手段の一つとなりつつある。
―国土交通省は2016年度を生産性革命元年と位置付け、「i-Construction」の徹底的な推進を目標に掲げている。
「国土地理院としても今年3月に『i-Construction推進本部』を立ち上げ、UAVを使って3次元測量のデータを取り、測量だけでなく工事の施工管理や完成検査にも活用しようと、取り組んでいる。3月末には写真測量と三次元点群測量に関する公共測量マニュアルを公表した。これらがベースになって建設現場の三次元測量データの活用が進むことを期待している」
「ただ、UAVにも一長一短がある。安全管理も極めて重要だ。作成した安全基準を公共測量マニュアルとともに一体的に運用し、『i-Construction』を推進していきたい。今後、ますます三次元データやUAVを使った測量が増えてくる。国土地理院は全国に10の測量部または支所があるのだが、2年後をめどに国土地理院全体でランドバードを100人体制にすることを目標に置いている。災害時だけでなく平常時から技術・技能を磨き、三次元測量に貢献していきたい」
「建設生産システムにICTや地理空間情報を手段として位置付け、有効に活用して生産性を向上させよう、というのが『i-Construction』の考え方。だが、その真の目的は『付加価値の向上』にある。ぜひ、このことを理解し、生産性の向上を測量業や建設業で働く人たちの賃金水準の向上に反映させてほしい。生産性が上がり、それが給与のアップや取得できる休暇の増加につながれば若者にも希望が持てる産業になっていく。古い3K(きつい、きたない、危険)ではなく、新しい3K(給料、希望、休暇)の労働環境を創っていきたい」
「新しい技術がもたらしてくれるものがある一方で、ともすれば古いと見なされがちな技術の中にも、大切に継承していくべきものがある。新しい技術に軸足を移しながらも、新旧の技術を融合させていくことも必要。例えて言うなら野球と同じようなものだ。ホームランバッターだけでなく、アベレージヒッターも不可欠だし、小細工できるプレーヤーも必要。ベテランのいぶし銀のような味と、躍動する若い力が噛み合ってこそ組織としての力を発揮することができる。われわれ国土地理院も、従来の水準点や三角点を用いる基準点測量と、電子基準点や干渉SAR(合成開口レーダー)のような人工衛星を使った技術をうまく、バランスよく組み合わせて活用し、『全体最適』を目指していかなければならない」
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建通新聞社