国土交通省は、公共建築工事の発注者が適切に工期を設定するための参考事例やポイントを示した「公共建築工事における工期設定の基本的な考え方(事例解説)」をまとめた。調査・設計から施工までの各段階で、工期の遅れにつながる不適切な事例を挙げた上で、そうした事態を未然に防ぐポイントを示した。例えば、品質・安全面に問題が生じる工期短縮の技術提案を原則禁止するなどとした。
国交省は2015年度、発注者が工期を設定する際に留意すべき「公共建築工事における工期設定の基本的な考え方」をまとめた。品確法で発注者責務とされた適正な利潤の確保と適切な工期設定を公共建築工事で実現するための取り組みだ。
事例解説は、工期遅延につながる不適切な事例とその改善策を公共建築工事の段階ごとにまとめたもの。適切な工期を設定する意識を公共建築工事の発注者である地方自治体にまで浸透させる狙いがある。
調査・設計段階を見ると、設計与条件で「無」としていた地下掘削時の湧水が施工時に確認され、工期延期が必要になった事例を掲載。敷地調査を実施し、地下水の有無や地歴などの情報を的確に設計図書に反映する必要があると指摘した。
工事の発注準備段階では、機械製作が含まれる工事で、現場代理人の常駐義務を過剰に課したため、入札が不調なったケースを紹介。契約直後の準備段階、機械の工場製作期間、完成検査終了後の片付けの期間などに、現場代理人の常駐義務や監理技術者の専任義務を緩和することを条件明示するよう求めた。
また、入札契約段階では、総合評価方式で工期短縮の提案を求めた工事で事故が発生し、完成が遅れた事例を挙げ、品質・安全面の問題が生じる可能性を排除するため、工期短縮に関する技術提案を原則禁止するべきと明示した。
国交省は、事例解説に加え、庁舎新築や庁舎改修における工期設定のイメージ図、適切な工期を設定するためのチェックシート、予算要求段階で使用する事前調査票なども合わせて活用することで、自治体に適切な工期設定を促す。
提供/建通新聞社