国土交通省は、2017年度の目標期限まで1年を切った社会保険未加入対策を強化する方針を決めた。企業単位の対策として、直轄工事で行っている元請け・1次下請けの未加入業者の排除を2次以下に広げる検討に入ったことに加え、労働者単位でも、元請け企業の下請け企業に対する指導責任の強化を法制上の位置付けを含めて検討する。いずれも17年4月に実施に移す。このほかにも、内訳明示した見積書(標準見積書)の活用に関する立入検査による確認をはじめ、法定福利費の確保、相談体制の充実、労働者の形態に応じた加入すべき保険の明確化など、来月以降、目標達成に向けた新たな対策を矢継ぎ早に打ち出す。
元請け・専門工事業団体などとつくる社会保険未加入対策推進協議会を開き、対策を強化する方針を示した。
社会保険未加入対策には、許可業者の加入率100%、労働者単位で製造業相当(90%程度)を17年度に達成する目標がある。海堀安喜建設流通政策審議官は「加入率は業界の努力で着実に向上しているが、都市部や2次下請け以下などで加入が進んでおらず、この1年が最も厳しいところになる」と述べた上で「この問題にけじめを付けて17年度を迎えなくてはならない」と強調した。
直轄工事では、14年8月から企業単位で未加入の元請け・1次下請けの排除措置をスタートし、現在は全工事で対策を実施中。未加入の2次以下には、発注者が建設業許可部局などに通報し、加入指導を行っているが、元請け・1次に比べて加入率が低い2次以下の対策を強化する方向で検討に入った。地方自治体にも未加入企業の排除措置を実施するよう、6月に入札契約適正化法に基づく要請を行う。
労働者単位の加入促進に向けては、現場における元請け企業の指導責任を強化。法制上の措置を含めて内容を詰め、17年4月から対策を実施する。
一方、社会保険加入の原資となる法定福利費の確保では、建設業許可部局の立入検査時に標準見積書の提出状況を確認・指導する。社会保険加入に関する下請け指導ガイドラインを改訂し、標準見積書の提出を見積条件として提示することが再下請負にも適用されることを明確にする。
対策を強化することに合わせ、未加入業者に対する相談体制の充実も図る。全国社会保険労務士会連合会と連携して安全大会などの機会に個別相談会や説明会を開くほか、対策の周知する地方キャラバンを昨年度に続き開催する。
協議会では、国交省が企業別・労働者別の目標達成を17年4月に検証する考えも示した。目標年度を迎える同年4月に建設業許可更新時の加入指導記録などから速報値を検証。許可更新の加入指導が一巡する同年11月に改めて目標の達成状況を把握するとした。
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建通新聞社