「土曜日を当たり前に休める産業にしたい」―。労働者の処遇を改善し、ひいては建設産業の魅力を向上させたいとの思いは業界の誰もが普通に抱いている思いであろう。公共工事設計労務単価引上げなど雇用・就労環境を改善するための施策がこの数年間で次々と講じられてきた。建設業従事者の処遇は徐々に改善されつつある。こうした中、いまは休日の確保と、それを実現するための適切な工期設定が重要なテーマの一つとなっている。
しかし、どうも現場での休日取得はあまり進んでいないようだ。日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)が行った調査によると、工事開始時に4週4休しか確保できない現場は全体の約半数に上っている。4週6休以上を設定した現場であっても、計画通りに取得できたのは4割弱にとどまる。4週6休以上の休日設定をしなかった理由として一番多かったのは「工期が厳しい」で、実に8割以上を占めた。
積算上、休日は確保されているにもかかわらず、なぜ取得が進まないのだろうか。さまざまな要因があろうが、日建連の調査結果から見えてくるものがある。直轄トンネル工事の工程を調べたところ、準備工事の精査や、条件明示の不整合などで生じる遅れに対応するため、契約工期に間に合わせる「休日の圧縮」が行われているというのだ。
これは、工程に関する受発注者間の認識のズレを示しているとも言え、準備工事と後片付け期間でその傾向が顕著だ。例えば、工期約37カ月のトンネル工事の場合、積算工程(受注者が過去の経験値から類推)と実際の工程では準備工事で2カ月、後片付けで1カ月の乖離(かいり)が生じていたという。
さらに、準備工事前の作業期間や後片付け期間の条件明示の在り方が、各地方整備局によって異なることも明らかになっている。積算資料などでは必要日数が開示されている例は多いが、記載日数や内容にバラツキがあり、特記仕様書では具体的な記載が見られない。現在、直轄案件を中心に、モデル工事が試みられているが、これでは「週休2日」の実現はほど遠い。
また、日建連の調査結果は工期の延長に至る現場が多いことも示している。過去3年間、工期が延長された工事の割合は60%台で推移。主な理由として挙げられているのは、追加工事の発注の他、設計条件の見通しの甘さや設計図書の不備などだ。条件明示が不十分だったために、工期の確保に影響したケースも4割以上あった。
不適切な工期設定は長時間労働の増加ばかりでなく、人員・資機材の手配などにロスが生じ、企業から利益を奪いかねない。大手ゼネコン以上に中小企業や専門工事業への影響は大きい。
日建連では、適切な工期設定と休日確保に向け、準備や後片付けの期間などについて発注者との共通認識を持つことを最初の一歩と捉えている。11日からは、適切な工期設定などを主要テーマとする、各地方整備局との意見交換会が始まった。休日も給与も「当たり前」に得ることができる産業を目指し、地方への波及も視野に入れた建設的な議論を期待したい。
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建通新聞社