総務省は行政評価法に基づいて実施した調査結果を基に、アスベスト対策に関する勧告を環境、厚生労働、国土交通、総務―の4省に対して行った。東日本大震災などの教訓を踏まえ、災害時のアスベスト飛散・ばく露防止対策の内容の周知徹底を求めたほか、建築物の解体時の飛散・ばく露防止対策についても、事前調査の適正な実施を確保し、アスベスト含有成形板などの飛散・ばく露防止の実態を把握するとともに、改善措置状況の確認を徹底するよう勧告した。
災害時のアスベスト飛散・ばく露防止対策については、環境省が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて策定、通知した災害対応マニュアルが十分認識、活用されていない自治体や、地域防災計画に災害時のアスベスト飛散・ばく露防止対策を規定していない自治体があったことを指摘。環境省に対し、災害時に備えた準備の必要性を含め、マニュアル内容の周知を徹底し、対策を強化するよう促した。
建築物の解体時の飛散・ばく露防止対策については、事前調査でアスベスト含有建材を見落とすなど、適切な措置を講じないまま解体工事を実施したり、大気汚染防止法(大防法)の施行規則などで規定された届出を行わないまま解体工事を行っている事案があったことなどを指摘。環境省と厚労省に対し、調査が不十分な事案について情報を収集できる仕組みを整備するなど、調査の適正な実施を確保するよう求めた。
また、大防法では規制対象外としているアスベスト含有成形版は、事業者の事前調査や建材の湿潤化が不十分なために、飛散・ばく露の恐れがあると結論付け、同成形版の処理実態を把握した上で、法律上の取り扱いを含めて所要の措置を取るよう勧告した。
さらに、県・市が指導した飛散・ばく露防止措置の改善状況の確認が不十分と指摘。環境、厚労両省に対し、改善措置状況の確認を徹底するよう求めた。
総務省は、20年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた再開発などにより、さらに建築物の解体の増加が見込まれるとの見方を示した上で、今後、南海トラフ地震や首都直下地震など大規模災害が発生する恐れもあると指摘。平常時から適切なアスベスト飛散・ばく露防止の徹底を図るとともに、災害時の飛散・ばく露防止についても準備を進めておくよう促した。
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建通新聞社