2016/04/20
運用5年で全技能者登録 建設キャリアアップシステム
国土交通省は19日、「建設キャリアアップシステム(就労履歴管理システム)」を構築するための官民コンソーシアムを開き、同システムの基本計画書を固めた。システムは、技能者の資格や就労実績を業界統一のルールで蓄積する。蓄積した情報の利用は処遇改善などの目的に特化する。10月からシステム開発に着手し、2017年4月に登録開始、同年8月に運用を始める。大規模工事から段階的に対象を広げ、運用開始後1年で技能者100万人、5年をめどに全技能者の登録を目指す。
コンソーシアムでは、これまで「就労履歴管理システム」や「技能労働者の経験が蓄積されるシステム」としていた名称を、「建設キャリアアップシステム」とすることで合意。システムに蓄積する技能者の施工力に関する情報が、技能者本人のキャリアパスに活用できるとの意味を込めた。
登録する技能者本人の情報は▽氏名・住所・性別・生年月日・国籍▽雇用事業者▽社会保険加入状況▽建設業退職金共済番号・手帳の有無▽保有資格―を必須情報とし、研修受講履歴や労災保険特別加入の有無などは任意で登録する。原則として技能者本人が登録するが、所属企業や建設業団体による代行も認める。
本人情報は、身分証明書や資格者証を添付して本人確認を行い、真正性を確保する。ただし、真正性を確保できなくても登録自体は認める。登録した技能者には技能者ID番号を記載し、資格・技能に応じて色分けしたICカードを交付する。
事業者情報は、商号・所在地・建設業許可情報を登録。元請け・下請けが企業単位で情報を登録する。下請けには、元請け・建設業団体による申請代行も認める。元請けは必須で建設工事の現場情報、任意で契約情報も登録する。各現場には、カードリーダーなどを設置し、技能者の入退場を管理するとともに、各現場での技能者の就労情報を蓄積できるようにする。
登録した情報は、技能者が入場中の現場の元請けや上位下請けが工事期間中のみ閲覧できる。技能者本人と所属企業が同意した場合に限り、システムに登録した他の企業も技能者情報を閲覧できるようにする。
システムの開発費は、出えん金で賄うことを基本とする。システムの運営は、技能者・元請け・下請けの登録料から費用を捻出。技能者は情報登録時にカード発行などの実費を負担、元請けは現場の規模に応じて登録料を負担する。下請け企業にも一定の登録料の負担を求める。
基本計画書ではこのほか、他のシステムとの連携についても記述しており、既存の労務安全システムとは一定の範囲でデータ交換を行うとした。建設業退職金共済制度との連携については、当面の間、元請けが共済証紙を現物交付する仕組みを補完する。将来的にシステムで建退共制度を代替することを目指す。