2016/04/20
歩切り全廃 次は積算に目を向けよ(建通新聞社・建滴)
品確法の改正後に進められてきた国土交通省の働き掛けが実を結び、3月末までに全ての地方自治体で歩切りが廃止された。1年以上にわたる働き掛けの根拠になったのが「予定価格の適正な設定」を発注者の責務とした品確法第7条だ。
国交省は、2014年9月に閣議決定した入札契約適正化指針で、歩切りが品確法第7条の規定に違反することを初めて明記した。同年12月に作成したリーフレットでは「適正な積算に基づく設計書金額の一部を控除する行為」が歩切りに該当すると定義するとともに、歩切りに当たる行為を具体的に例示した。
歩切りが法令違反の恐れがあるとの定義を示した上で、国交省は全自治体を対象とする実態調査を実施。この調査で、15年1月1日時点で歩切りを行ってることを認めた自治体は459団体に上った。全ての自治体の実に4分の1に当たる数だ。
国交省は総務省と協力し、4回にわたって歩切りの取りやめを要請。昨年5〜7月に主要7都市で開いたブロック監理課長等会議では、全ての都道府県と歩切りの根絶に取り組むことで合意した。都道府県の協力を得てさらに根絶に向けた動きは加速。ことし2月時点で歩切りを継続する意向を示した自治体は3市町村にまで減少した。
最終的には、国交省職員が直接訪れて首長を説得。結果的に全3市町村が歩切りの廃止を決定したため、歩切りの全廃を達成することになった。
公共工事の発注者が長年にわたり続けてきた”悪習“とも言うべき歩切りが全廃された意義は大きい。歩切りは白黒がつきやすい行為だからこそ、違法性を指摘された各自治体が、この短期間で自ら襟を正すことにつながったのだろう。
ただし、歩切りは廃止されたものの、発注者が設計書金額の算出を誤ることで、適正に予定価格が算定されない「違算」の問題は依然として残る。技術職員の体制が整っていない小規模な自治体ほど、違算が多いことは想像に難くない。
国交省直轄の営繕工事では、こうした発注者の積算の誤りを是正する新たな取り組みを始めた。4月1日から全ての営繕工事で試行されている「入札時積算数量書活用方式」は、これまで入札参加者に「参考資料」として公開していた数量書の位置付けを見直し、契約後に発注者の積算数量の誤りを受注者が見つけた場合、受発注者で協議して数量を訂正、請負代金を変更することを「契約事項」と定めた。
積算数量に疑いを持った受注者が監督職員に申請すると、発注者は数量の訂正を協議することが求められ、実際に間違いが確認されれば、契約変更することが義務付けられる。
歩切りの全廃は、品確法改正の効果を分かりやすい形で示す大きな効果を挙げた。予定価格を適正に設定するためには、さらに上流にある積算に目を向ける必要がある。
発注者が積算数量の誤りを認め、契約変更に応じる入札時積算数量書活用方式のような新しい試みが自治体にも浸透することを期待したい。加えて国交省には、マンパワー不足に悩む自治体の負荷を軽減する、積算作業の簡素化や自治体との積算システムの共有化などにも力を入れてほしい。