経済産業省の「将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会」は、現在の介護施設の利用状況を前提とした場合、介護保険3施設と特定施設、グループホームの介護サービス受給者数が2035年にかけて約85万人伸びると見込まれ、現状の施設整備費を前提としたケースで、新築だけで今後1年当たり約3500〜4500億円程度の施設整備費が必要になる、とする推計を明らかにした。
介護保険3施設(介護福祉・介護保健・介護療養)の入居需要は、都市部を中心として数千人規模の需要の発生を見込んでいる。特に東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で介護保険3施設への入居需要が35年までに15万8000人超増加するとした。
他方、東日本大震災の復興需要や2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要の増加に伴う建設コストの増加についても指摘。08〜14年までの特別養護老人ホーム1平方b当たりの建設単価などを例示し、14年の単価が首都圏で28万6000円、東北(被災)3県で28万2000円、全国平均で25万9000円となっている一方で、首都圏で定員1人当たりの延床面積を45平方b以下に抑え、定員1人当たりの建設単価をほぼ全国平均に近い1200万円にとどめている現状を示した。研究会は「首都圏など単価の高い地域は延べ床面積を小さくすることで、定員1人当たりの建設単価を全国平均と同程度に抑えている」と分析している。
東京、神奈川、埼玉、千葉―の1都3県で供給数が急増しているサービス付き高齢者住宅については、1平方b当たり20万円超、1戸当たりの床面積が40平方b、1戸当たりの建設単価が800万超となっている関東の建設単価などを示し、特別養護老人ホームとは異なり、サ高住の1戸当たりの建設単価と平米単価に同じ地域特性が見られることなどを指摘した。
少子高齢化の進展に伴い、今後、介護サービスの需要が増加し、家計・企業ともに介護保険料や税負担が増加するとみられている。このため研究会は地域特性や将来の高齢者の経済的・社会的環境を踏まえ、将来の介護需要に即した介護サービス提供の在り方について、団塊の世代が85歳を超える35年に向けた対応策を検討、提言していた。
提供:建通新聞社