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2016/04/04

地方創生と不動産業  「まちの強靭化」へ提案力磨け(建通新聞社・建滴)

 国土交通省が発表した2016年公示地価(1月1日時点)の全国平均値が、8年ぶりに前年よりも上昇した。住宅地はわずかながら下落したものの、都市部を中心とする商業地でプラス0・9%と昨年の横ばいから上昇に転じ、全体を底上げした。「リーマン・ショック」以降、地価の落ち込みが続いたものの、訪日外国人観光客の増加やオフィス需要の拡大が価格を押し上げた。

 今回の公示は「地方中枢都市」に位置付けられる札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4市が大きく上昇した。住宅地がプラス2・3%、商業地がプラス5・7%といずれも三大都市圏の伸び率を上回った。4市のうち、調査地点の約80%で地価が上昇した。

 不動産市況は、東京都心部のみならず地方の主要都市でも、企業の業績改善でオフィスの増床や拡張・移転などの動きが活発化しているという。テナントの募集賃料が上昇し、空室率は低下している。

 ただ、地方中枢都市よりも人口が少ない地方圏では、依然として人口急減や超高齢化といった問題に対する解決の糸口を見付けられずにいる。今回の公示地価だけでは、都市圏と地方圏とで二極化した「格差」が縮小したとは決して言えない。

 現に16年の公示地価でも、前年との比較が可能な約2万3000地点のうち、上昇した8100地点を上回る約1万地点で地価が下落。下落地点の多くを、三大都市圏や地方中枢都市を除く地方圏が占めている。

 特に、人口が20万人に満たない多くの自治体では、地価を押し上げる要素が乏しく、地域経済にも直接的に悪影響を及ぼしている。「シャッター通り」と化した商店街や、放置された空き家を見受けることも少なくない。企業にしてもよほどの理由や好条件がなければ、人口減少が続く地方圏に拠点を設けようという考えにはならないだろう。

 地方活性化に向けた妙案を導き出すことは、そう簡単なことではない。ただ、訪日外国人観光客が増加する中で、地域の魅力を積極的に情報発信し、新たな経済の流れを生み出した好例もある。

 岐阜県高山市や大分県由布市では、歴史的な街並みや温泉などの観光資源を前面に出したまちづくりを展開。その結果、国内外から多くの人を呼び込むことに成功した。駅前では免税店やホテルの開業が相次ぎ、両市の商業地の地価上昇を引っ張った。担保価値が上がれば、中小企業であっても設備投資などの資金を手当てしやすい環境が生まれる。地価の上昇は、地方圏における経済の好循環を引き起こす突破口にもなり得る。

 地方の土地に新たな価値を創出し、新しい人の流れを生み出すためには、道路網などインフラの強靭(きょうじん)化に加え、地方の実情に合った「まちの強靭化」に取り組まなければならない。地域の実情を熟知した、地方の不動産企業からのまちづくり提案、地域に暮らす人々に寄り添った、地方目線のそれが地方創生のスピードアップに欠かせない。