国土交通省は、施工時期の平準化に向けた地方自治体の先進的な取り組みを事例集としてまとめた。債務負担行為の活用や積算の前倒しなど、自治体独自の先進事例22件を掲載している。地方自治体の発注担当部局が施工時期の平準化に新たに取り組もうとする時に、財政部局など庁内での調整を行う際などに活用してもらう。
事例集は「平準化の先進事例『さしすせそ』」と題し、自治体独自の事例22件を▽(さ)債務負担行為の活用▽(し)柔軟な工期の設定(余裕期間制度の活用)▽(す)速やかな繰り越し手続き▽(せ)積算の前倒し▽(そ)早期執行のための目標設定(執行率の設定、発注見通しの公表など)―の5分野に整理した。
債務負担行為の活用では、年度末を工期末とする従来の工事発注の流れを見直し、複数年度の債務負担行為を設定して施工時期を平準化する取り組みを紹介。岐阜県では、出水期などの制約で年度後半に施工時期が集中する傾向にあるため、工事だけでなく、調査設計業務にも債務負担行為やゼロ県債を活用し、事業全体の平準化を図っている。
工期設定や施工時期の選択を柔軟にするため、受注者が工事開始日を選択できる任意着手方式を活用する自治体も多い。事例集では、落札決定の翌日から工事着手指定日の猶予期間を定める「早期契約制度」(長野県)▽発注者が指定する期間の範囲内で受注者が工事開始日を選択できる「フレックス工期契約制度」(奈良県)―などの取り組みを掲載している。
気象状況や用地取得の遅れなどを理由に、年度内の完成が困難だと分かった工事では、速やかに翌年度への繰り越し手続きを行うことも求められるが、予算の繰り越しに必要な議会承認をネックと感じる自治体も少なくない。福島県や高知県は9月議会、島根県は11月議会での議会上程を認めており、議会承認の手続きを前倒しすることで、早期の手続き着手に努めている。
年度末までに設計だけでなく、発注者による予定価格の積算までを完了させる「積算の前倒し」を行っているのは埼玉県だ。同県では、通常は年度末に納期を設定する詳細設計を早期に発注することで、工事発注の前年度のうちに予定価格の積算を完了。これにより、単価の入れ替えを行うだけで、新年度の早期に入札手続きを開始することができるという。
滋賀県では、施工時期の平準化に配慮するため、上半期の工事の発注率(契約率)を75%とする目標値を設定。年度目標の達成に向け、進捗状況を公表している。
市町村とも連携して施工時期を平準化するため、茨城県、京都府、埼玉県による発注見通しの統合の事例も紹介している。
提供/建通新聞社