国土交通省の「i−Construction委員会」は28日の会合で、『建設現場の生産性革命』と題した報告書の内容を大筋で固めた。報告書を踏まえ、国交省は4月以降の直轄事業でICT技術を全面的に活用した「ICT土工」を導入。ドローンによる3次元測量とICT建機による施工の拡大に加え、3次元データの活用により検査日数と検査書類の大幅な削減を可能にする。ICT建機用の積算基準で受注者側に生じる必要経費を支援するとともに、ICT技術に精通した技術者・技能労働者向けの資格制度の構築も検討する。
委員会の報告書では▽ICT技術の全面的な活用(ICT土工)▽全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化)▽施工時期の平準化―を「トップランナー施策」と位置付ける。土工や場所打ちコンクリート工の生産性に目立った向上が見られないことに加え、これらの工事に従事する技能労働者が全体の4割に相当し、改善の余地が大きいと判断した。
このうち、ICT土工については、調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新の全工程で3次元データを一貫して使用できるよう、直轄事業において15の新基準を4月から適用する。さらに、直轄事業の全土工をカバーする数のICT建機が普及していないため、ICT建機などの受注者側の設備投資を発注者が一定期間負担する新積算基準を導入する。
ICT土工に対応できる技術者・技能労働者の拡大も促す。報告書では、ドローンの測量、3次元CADの設計、ICT建機の操作など、個々のICT技術に対応できる技術者・技能労働者に加え、トータルでICTを使いこなし、工事全体をマネジメントできる技術者が求められると指摘。
発注者、受注者、建機・測器メーカーなどが共同で研修体制を構築するとともに、ICT施工の知識・技能・実務経験を評価するための資格制度の構築も検討する。
コンクリート工の規格の標準化では「コンクリート生産性向上検討協議会」で、大型構造物へのプレキャスト製品の適用範囲拡大を引き続き検討する。革新的な技術開発や全体最適の本格的な導入を促すため、工期や省力化に関する目標を設定した技術コンペ(技術提案・交渉方式など)を実施し、全国的な普及を図ることも検討する。
施工時期の平準化については、まず、直轄事業における早期発注や債務負担行為の活用で、年度当初の閑散期と年度末の繁忙期の解消を図る。報告書では「長期的な平準化」を図ることも提言し、地域で災害時対応やメンテナンスを担う建設企業の将来的な経営環境に配慮し、事業量を長期的にマネジメントする必要性についても指摘。
建設産業だけでなく、金融・物流・ITなどの企業関係者を交えたコンソーシアムも立ち上げる。コンソーシアムが主体となって、最新技術に関する見本市の開催やICT技術の全面的活用で蓄積されたビッグデータの活用、国際標準化などについて検討する。
提供:建通新聞社