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2016/03/28

理解することから始めたい 建設業のメンタルヘルス対策(建通新聞社・建滴)

 「ストレスチェック」が昨年12月から従業員数50人以上の事業場に義務付けられるなど、官民挙げてのメンタルヘルス対策が進みつつある。建設業も例外ではないが、現状でその取り組みは十分とは言えない。労働者のメンタルヘルス不調がもたらす損失は企業だけでなく、それぞれの家庭にとっても大きい。心身ともに健康で働きやすい職場をつくり、ひいては魅力ある産業とするために、いま、すべきことは何だろうか。

 メンタルヘルスの不調に悩む人々は確実に増えている。労災補償という側面から現状を見ると、精神障害の請求件数と支給決定件数は増加傾向にあり、2014年度には過去最高の水準に達した。総合工事業と職別工事業の支給決定件数が上位15業種の中に入るなど、建設業は他の産業と比較して決して好ましい状況にあるとは言えない。

 労災認定された精神障害の発症原因として上位を占めるのが「仕事の質・量」「事故や災害の体験」「対人関係」の三つ。労働環境改善の必要性を指摘され、重大事故に巻き込まれるリスクの高い建設業も同様の傾向にあると考えてよいだろう。

 それでも、業界の取り組みは進んでいない。対策の「入口」と言えるストレスチェック制度が十分に浸透していないのはその一例だ。建設労務安全研究会の調査によると、労働安全衛生法による事業者(従業員数50人未満は努力義務)への義務付けを「知っている」と回答したのは総合建設業で約9割、専門工事業では約6割にとどまっている。また、実際にメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場となると、3分の1にも満たない。

 さらに、メンタルヘルスそのものへの理解不足をうかがわせるデータもある。厚生労働省の調査では、対策に取り組んでいない理由として半数の企業が「該当する労働者がいない」ことを挙げた。「必要性を感じない」との意見も少なくないことから、実状を把握した上の回答なのか疑問が残る。メンタルヘルスの不調によって休業、または退職した労働者に対する職場復帰ルールの有無が他産業に比べて低い、との事実もあり、メンタルヘルスの不調に苦しむ人はつらい状況に置かれている。

 建設業労働災害防止協会(建災防)の有識者委員会は今月10日、「健康KY」と「無記名ストレスチェック」の実施を提言した。
 健康KYは、メンタルヘルス不調の未然防止を目的とし、「頭痛がする」「だるい ねむい」などを個人がチェックし、監督者が健康観察などを行う。無記名ストレスチェックは個人情報管理の問題が生じず、建設現場に混在する複数事業者の労働者を対象に行える利点があるという。

 こうした公的な団体、または関係機関による実態調査や支援策の拡充の他、企業単位の取り組みをさらに進めなければならない。

 今年も将来ある若者が業界に入職する。彼らが生き生きと働き、自分の仕事にやりがいと誇りを感じてもらうための対策づくりを行うべきだ。まずは、職場がさまざまな人々の集合体であることを認識し、メンタルヘルスとは何か、不調による苦しみとは何かを理解するところから始めたい。