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2016/03/14

環境不動産とESG投資 省エネ市場の活性化につなげたい(建通新聞社・建滴)

 国土交通省が「グリーンリース・ガイド」を作成した。2016年度は環境省と連携してグリーンリースモデル補助事業を創設し、グリーンリース契約を締結するビルオーナーとテナントの協働を支援していくという。ともすれば民間側が先行していたきらいのある「環境不動産」だが、国は、普及に向けた民間の取り組みをさらに後押しし、省エネ市場の活性化につなげたい。

 「環境不動産」は、ビルオーナーとテナントの双方が協働し、日々のビル運営管理の中でエネルギー消費量やCO2排出量削減を目指すことで、お互いにインセンティブを享受するとともに、環境負荷の低減に貢献しようという理念、行為、あるいは行為の対象となる物件そのもののこと。

 片や「グリーンリース」は、ビルオーナーとテナントが省エネなど環境負荷の低減や執務環境の改善について契約や覚書を交わし、取り決めた内容を実践することで双方がWin−Winの関係を築こうとする、環境不動産の実現を目指す行為の一つのカタチ、と言ってよいだろう。

 世界的な気候変動の顕在化とともに、民生部門、特に建築物の温室効果ガス排出削減への貢献が問われるようになってから久しい。それでもわが国の不動産流通の分野では、個社が自社商品(物件)・サービスを差別化するためであったり、CSR(企業の社会的責任)の一環としての取り組みはあっても、不動産業全体としての戦略的なプライオリティは、決して高いとは言えなかったように見受けられる。

 それがどうだろう。金融庁が14年2月に環境・社会・ガバナンスへの配慮を求めるESG投資の考え方を一部取り入れた日本版スチュワードシップコード「『責任ある機関投資家』の諸原則」を策定した頃から、にわかに不動産分野の取材の中でも環境不動産というキーワードを目にし、耳にする機会が増えた。

 この諸原則には「機関投資家は投資先のガバナンス、企業戦略、業績、資本構造、社会・環境問題に関連するリスクへの対応について把握すべき」と明記されており、15年12月時点で201の機関投資家・運用機関がその受け入れを表明している。

 その一方で、金融機関が本業を通じて環境などに配慮することなどをうたった「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」には、15年5月時点で国内の195金融機関が署名。ファイナンスの世界にもESG投資の考え方が根付き始めている。

 こうした環境不動産をめぐる潮流は、中小企業も含めた電気、空調衛生など設備業者だけでなく、資機材メーカーなどにも受注機会の創出や事業機会の創出につながっていく可能性がある。

 オフィスを含む民生部門が占めるエネルギー消費量は国内消費量全体の3割以上。政府はZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を推進する一方で、16年4月からは低圧電力の小売りを自由化する。20年には「完全自由化」が実現する。高圧の小売りはすでに自由化されているが、環境不動産の普及が電力市場を刺激し、両者のシナジー効果で省エネ市場が活性化することを大いに期待したい。