建設業のメンタルヘルス対策を検討してきた、建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)の検討委員会(委員長・櫻井治彦産業医学振興財団理事長)は10日、「健康KY(危険予知)」と「無記名ストレスチェック」を組み合わせて実施すべきとした検討報告書をまとめた。メンタルヘルス不調の未然防止と、職場環境の改善を目的としたもの。建災防では今後、報告書に基づく対策の普及・促進を進めることにしている。
労働安全衛生法の改正によってストレスチェックが義務付けられるなど、メンタルヘルス対策の推進は建設業にとって喫緊の課題となっている。このため、建災防では昨年12月に検討委を設置し、建設現場でも簡便に行うことができ、分かりやすく効果の挙がる手法を検討してきた。
委員会がまとめた報告書では、建設現場で働く人々の心身の健康が確保され、魅力ある職場となるよう、健康KYと無記名ストレスチェックの実効性を高めるためのさらなる検討など、六つの項目を提言している。
健康KYは、朝礼やミーティング、工程打ち合わせなど日々の安全衛生活動をサイクル化した「安全施工サイクル」を活用するもので、メンタルヘルス不調の未然防止が目的だ。具体的には、「頭痛がする」や「だるい ねむい」などの自己チェック、監督者による健康観察などを安全ミーティングのKY活動時に行うべきとした。
一方、無記名ストレスチェックは安全朝礼時に行う。工期内に複数回実施することで、職場環境の改善につなげるのが狙い。無記名のため、個人情報管理の問題が生じず、建設現場に混在する複数事業者の労働者を対象に行うことが可能となる。
委員会では、実際の現場2カ所で健康KYと無記名ストレスチェックを試行済み。健康KYの問い掛け項目や実施方法について、「現場の実態に即したものにブラッシュアップさせる必要がある」などの課題を見出すことができたという。今後は、試行結果を踏まえてチェック項目などを精査していく。
報告書ではこの他、メンタルヘルス対策を進めるために、▽経営層への訴え掛け▽中小規模事業者に対する支援の枠組み検討▽職場環境を改善した好事例の収集・普及▽対策を進めるための書籍・資料の作成、教育・研修▽事業者が進める対策への助言体制構築―を提言している。
提供:建通新聞社