日本学術会議主催の公開シンポジウム「地方創生と土地利用変革〜法制度の創造的見直し」が1日に行われた。人口減少が進む中で地方創生を実現するために、都市計画や土地利用、森林・農地など各分野の識者が法制度見直しを通じた新たなまちづくりと土地利用の在り方を提言した。
既存建物を生かすための制度改革を提言した明治大学の園田眞理子教授は、「世帯型と居住の多様化を法規制が阻んでいる」と指摘。その上で、既存建物の個別性に応じて用途転換の可否や改修の妥当性を判断する「建築リノベーション法」の制定などを提案。地域の独自性を最大限に認めるリノベーションの判断基準を定めるべきとした。
東京大学の浅見泰司教授は、人口減少下での都市制度の在り方について、市街地拡大を前提とした現行制度を改め、計画的な市街地縮小や不動産価値が減少しても進められる市街地整備などを行うべきとした。具体的には、ダウンゾーニング型(容積率が徐々に減少する地域)など新たな用途地域の導入、区分所有法の変更決議要件の緩和、保留地処分金に大きく依存することのない土地区画整理事業の実施などが必要とした。
スマートシュリンク(撤退+再集結)実現に向けた制度の見直しを提言したのは、名古屋大学の林良嗣教授。将来的なインフラ維持コストが中心地と郊外とでは大きく異なる、との推計結果を示し、市街地コンパクト化の必要性を強調。名古屋市(2050年度時点)をモデルとした場合、1人当たりの維持コストは最大で100倍もの差が生じるという。このため、費用効率を基に撤退する地区を定め、インセンティブ税制による集住地区への人口集約などを主張した。
慶應義塾大学の米田雅子特任教授は、森林・農地の有効利用と自然地の公有化をテーマに話した。人口減少により利用目的のなくなる土地に対応するため、森林や農地の有効利用は不可欠との考えを示した。また、人手を掛けずに多面的な機能を発揮させる「自然地」では、所有者不明の土地を公有地化すべきとした。
当日はこの他、千葉大学の木下勇教授が「住民参加のまちづくりに必要な制度改革」として、ファシリテーターなどを活用した「本当の市民参加」の実現を訴えた。また、パネルディスカッション「地方創生と土地利用変革〜法制度の創造的見直し」も行われた。
提供:建通新聞社