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2016/02/29

中小の参入機会確保を(建通新聞社・建滴)

 「実績がなければ入札に参加しにくい」「だから低価格でも応札する」―そんな悪循環が指摘される中、東京都は総合評価方式の入札に都内区市町村の工事実績を反映させる方針を打ち出した。2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会後も見据え、老朽化した社会資本の更新や長寿命化といった都の公共事業の担い手を将来にわたって確保していくことが重要との判断から、中小建設業者の新規参入を促す狙いがある。

 都が比較的小規模な工事(予定価格が建築4億円未満、土木3億2000万円未満、設備1億2000万円未満)を対象に試行している施工能力審査型の総合評価では、工事成績評定通知書の総評定点の平均に応じて最大で「13点」を工事成績評価点として加算している。入札価格と工事実績で評価値が決まるため、都の工事実績を持たない業者は“劣勢”を挽回するために低価格で応札せざるを得ない。これが都の工事参入への障壁とされ、建設関係団体との意見交換などの場でも見直しを求める声が上がっていた。

 23日に開かれた都議会本会議で、代表質問に立った宇田川聡史氏(都議会自民党)はこうした状況を説明し、入札・契約制度の見直しの必要性を指摘した上で「地元の工事で培った技術力を評価し、中小事業者の人材育成を支援することも都の責務だ」と話して都の見解をただした。

 これに対し、長谷川明財務局長は「区市町村発注の道路や橋梁工事などの施工を通し、技術力を培いながら地域のインフラ整備に貢献している中小事業者が多く存在している」と述べた上で、今後増大する身近な社会インフラの老朽化などに対応するために「そうした中小事業者の技術力を生かしていくことが重要だ」と答弁。品質を確保しながら技術力のある中小事業者の新規参入を促すため「今後は都の総合評価方式に、都内区市町村発注の工事成績も評価する手法を新たに導入する」との方針を明らかにした。

 区市町村の工事成績の反映方法や実施時期など制度設計の詳細を詰め、できるだけ早期の導入を図る考えだ。

 区市町村と“受注者を取り合う”ことへの懸念もあるが、オリンピック・パラリンピック競技大会に備えた会場や周辺整備はもちろん、大会後を見据えたビジョンを示し、将来にわたる社会資本整備の重要性を唱える都にとって、その担い手となる建設業者の確保は欠かせない。技術者・技能者の不足が深刻化している建設業の受注環境を整えて雇用を安定させ、事業継続の可能性を高める必要があるのだ。

 一方、入札への参入機会が増える中小建設業者にとっては、工事成績が次の工事の受注につながるため、品質確保の重要性がさらに増す。無理のない受注計画を練りながら技術者・技能者を確保し、きちんと育成していくことが不可欠になる。

 今回の都の入札・契約制度の見直しを「持続可能な建設業」を構築するための一つの足掛かりとしたい。受注者と発注者がともに社会資本整備の重要性と建設業の役割を共有し、それを実現するための取り組みを連携して進めていかなければならない。