国土交通省は27日、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会を開き、基礎杭工事問題で明らかになった建設業の構造的な課題についての議論を始めた。小委員会は、重層下請構造の改善などによる建設生産システムの適正化・効率化、技術者や技能労働者の担い手の確保・育成など、基礎杭工事問題の背景にある課題の対策とともに、建設市場の変化や高齢者の大量退職といった建設業を取り巻く社会情勢を整理し、今後の建設業政策の基本的な方向性を示す。国交省は、6月にまとまる中間報告を踏まえ、必要な制度改正を行う方針だ。
国交省は、小委員会で建設業の構造的な課題をあらためて議論し「建設産業政策2007」以来となる政策の基本的な方向性を打ち出す。また、地域の中小建設業が抱える企業の小規模化や後継者問題も議題となる。
27日の会合では、モルガン・スタンレーMUFG証券調査統括本部の木敦副本部長が、建設投資がピーク時の81兆円から48兆円まで減少したものの「市場の量的・質的変化に企業と業界が対応できず、ミスマッチが起きている」と問題提起。今後の建設投資も「好調な企業の経常利益が設備投資に回っていない。投資の底であった41兆円に早い時期に戻る可能性が高い」との見方を示した。全国建設業協会の岩田圭剛副会長も「事業量の地域間格差が大きくなり、構造改善が進みづらい現状にある」と訴えた。
基礎杭工事問題で浮き彫りになった建設業の法令順守意識の低さを指摘する意見も目立った。公認会計士・税理士の丹羽秀夫氏は「建設業許可の更新時に(法令に関する知識を)再確認する仕組みが必要だ」と提言。許可要件の経営業務管理責任者(経管)について「法令順守の管理責任を負う立場にあるのではないか」と役割を検証する必要性を訴えた。
芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授は「法令を守った現場で造られたマンションを消費者が選ぶ『フェアトレード』の意識を浸透させる必要がある。法令順守が品質確保の大前提になることを前面に出したほうがよい」と持論を展開した。また、委員長の大森文彦東洋大学教授は、建設業の競争環境について「基本的には自由競争が前提だが、競争と保護の両立は難しい。競争すべきもの″競争してはならないもの″を区別する視点が重要になる」との認識を示した。
国交省は、27日の会合で出された意見を踏まえ、2月に開く次回の会合に各課題に対する対応の大枠を示す。3回目以降、それぞれの課題を個別に議論し、6月をめどに中間報告をまとめる。
提供:建通新聞社