国土交通省は、27日に開いた中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会に、重層下請構造の実態を把握するために行っている調査の中間報告を提示した。調査では、対象の現場約1万カ所のうち約70%が1〜3次下請けで完結していることを確認。全現場の下請け企業の合計約80万社のうち、97%が1〜3次下請けとして工事に参入していることも分かった。
施工体制台帳や作業員名簿の作成を支援する「グリーンサイト」に蓄積されている民間建築現場の施工体制台帳などのデータを整理した。
調査対象の1万0449現場を最大下請け次数で分類すると、1次下請けが562現場、2次下請けが2670現場、3次下請けが4047現場、4次下請けが2520現場、5次下請けが650現場となり、全体の69・7%の7279現場が1〜3次下請けで完結している実態を確認した。
下請け次数を現場の規模別に見ると、作業員数が200人を超える現場になると1次下請けで完結する現場がほぼなくなり、4000人を超える現場の60%以上で最大の下請け次数が5次以上となることが確認された。
都道府県別の下請け次数の分布では、1次下請けで完結する現場が和歌山県で45%、奈良県で44%と突出して多い。反対に、4次以上の下請けがいる現場の割合が多いのは▽兵庫県44%▽富山県43%▽東京都42%▽群馬県42%▽大阪府41%―などとなった。
基本問題小委員会では、建設生産システムにおける重層下請構造の改善を論点に掲げている。行き過ぎた重層化が現場の生産性の低下を招くといった問題意識を受けたものだが、調査結果だけを見れば下請け次数が3次以下で納まる現場が大半を占めた。
しかし、27日の小委員会では「重層下請には目に見えない下請けが存在する。専門工事業にある『班』や『応援』といった実態も踏まえて調査すべきだ」(蟹澤宏剛芝浦工業大学教授)との指摘もあった。国交省は、15年度末までにこの調査の最終結果をまとめた上で、16年度に下請け構造が重層化する要因や重層化に伴う弊害を整理する。
提供:建通新聞社