国土交通省は、事業の進捗(しんちょく)や工程の管理、用地取得などの業務を民間技術者が担う「事業促進PPP」のガイドラインを策定することを検討している。東北復興道路などの整備で導入されている事業促進PPPは、早期着工・早期完成が求められるプロジェクトなどで、発注者側の負担を軽減する効果がある。ガイドラインをつくることで、地方自治体への普及を図ることに加え、発注者支援業務を担う民間技術者を育成する狙いもある。
事業促進PPPは、これまで発注者が担ってきた測量・調査・設計・用地取得などの協議や調整など、施工前の業務を民間技術者と一体で実施するもの。ゼネコンや建設コンサルタントなどの技術者が事業管理、調査設計、用地取得、施工監理などを発注者と連携して担当する。
早期の完成が求められた東北復興道路で初めて導入され、その後、九州横断道路延岡線(嘉島〜山都)や伊豆縦貫道河津下田道路(U期)などでも導入されている。
これまでの実績で、業務が集中する事業開始時の発注者側の負担軽減や工事着手までの期間短縮に加え、発注者と民間技術者の技術力の相互移転を図れる効果が見えてきた。ただ一方で、事業促進PPPに加わったゼネコンがその後に発注される工事を受注できなかったり、事業促進PPPに従事する技術者の実績が評価されず、事業促進PPPへの参画をちゅうちょするといった課題も指摘されている。
このため、国交省は、事業促進PPPを導入する際に効果が大きいと見込まれる▽大規模・技術的に難易度が高いプロジェクト▽早期着工・早期完成が特に求められるプロジェクト▽地理的条件で通常の体制の確保が困難なプロジェクト―などを念頭に、まず直轄工事で活用をを広げたい考え。
これまでに明らかになっている課題を整理した上で、自治体の活用も見据えたガイドラインをつくるとともに、受注者側がインセンティブを感じられる仕組みも検討する。事業促進PPPで官民の技術を相互に移転することで、民間技術者のマネジメント力の向上を図り、発注者支援業務を担うことができる民間技術者を育成する効果も期待される。
提供:建通新聞社