国土交通省の「2015年度下請取引等実態調査」に、技能労働者の賃金水準を引き上げた(予定含む)と答えた建設業者が前年度比7・4ポイント増の68・6%に上ったことが明らかになった。実勢価格が上昇し、必要な労働者が確保できないことを引き上げの理由に挙げる建設業者が最も多かった。同じ調査では、建設業法で定める施工体制台帳の添付書類を作成している建設業者が公共工事で52・3%、民間工事で37・4%にとどまっていることも分かった。
15年度の実態調査では、無作為で抽出された1万1761者の回答を集計した。調査対象は12年7月1日から15年6月30日における取引。技能労働者の賃金水準の引き上げに関する調査項目は13年度から盛り込まれたもので、賃金水準を「引き上げた(予定含む)」と回答した建設業者の割合は68・6%と前年度から7・4ポイント、13年度調査から18・4ポイント伸びた。
賃金水準を引き上げた建設業者は、元請けが19・4ポイント増の70・2%と伸び率・割合ともに最も高い。一方、1次下請けは1・1ポイント減の52・5%、2次下請けが2・3ポイント減の53・5%と前年度から減少。3次下請け以下は0・9ポイント増の43・8%だった。
賃金水準引き上げの理由としては「実勢価格が上がり、引き上げないと必要な労働者を確保できない」が43・6%と最多で、「若者の入職促進など、業界全体の発展に必要と考えた」の33・4%、「業績好調で賃金に回す資金を確保できた」の31・6%が続いた。
施工体制台帳は、下請け契約の請負代金3000万円(建築4500万円)以上の民間工事に作成義務、全ての公共工事に作成・提出が義務付けられている。公共工事で96・4%、民間工事で86・5%の建設業者が作成義務を果たしているものの、建設業法施行規則で定める添付書類(契約書類、技術者資格の証明書、雇用関係の分かる書類など)を添付している建設業者は公共工事で52・3%、民間工事で37・4%にとどまった。
このほか、社会保険の加入率は、雇用保険96・2%、健康保険95%、年金保険97・5%といずれも前年度より改善。未加入の建設業者のうち「加入を予定している」と答えた業者も52・1%と5・1ポイント増えた。法定福利費を内訳明示した見積書は、活用を働き掛けた元請けが4・5ポイント増の33・2%(一部工事含む)、提出した下請けが4・3ポイント増の35・9%(同)といずれも増加した。
提供:建通新聞社